七つの神社を巡る|KINTAさん(1)紹介コラム

10月15日からのメイン期間では、アーティストの屋外展示が始まります。
どんな考えや環境で創作活動を行い、土祭2021では、どんな世界を私たちに見せてくれるのでしょうか。
土祭2021の広報冊子『ヒジサイノート』に掲載中のアーティストへのインタビュー記事を、お一人ずつ、こちらでも順に紹介していきます。今後、住民レポーターさんたちによる制作風景のレポートの掲載も始まりますので、どうぞお楽しみにお待ちください。
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アートプログラム|七つの神社を巡る 益子地区 星宮神社
KINTAさん  「益子農機具神獣と星の精霊群」
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益子町の南東部、高木も低木も草も一緒になって豊かに生茂る丘の上。坂道を登り詰めるとぽっかり空いた広場のような土地。そこに拓かれた町工場のようなスタジオにK I N T Aさんを訪ね、その一角にセルフビルドで増築したというギャラリースペースで話を伺った。

どうも僕は、土の人みたい。

「このスペースは、去年、二ヶ月でつくったの。創作の仕事を始めてもう三十年近くになるけど、去年初めて、仕事が無い状態が続いて。まあ、世の中、コロナだから、仕方がないよね。この機会に、今までできなかったことやろうと思って。まだ、ドアは付いていないけどね」 

土を捏ねて、木を削って磨いて、鉄を叩いて繋いで・・・。暮らしの道具からオブジェや作品づくりまでを自在にこなし、家族との生活においても、自分でつくれるものは何でもつくってしまうK I N T Aさんは、ものづくりの町・益子の、とても象徴的な存在のように思える。

 K I N T Aさんが普段から素材として扱う土と木と鉄について尋ねると、木と鉄は「大人」だと言う。それに比べて・・・。「土は、赤子のようで扱いが難しい。放っておくと乾いたり湿ったり、どんどん変わる。常に目をかけてあげないといけない」

土祭には、「土人形」づくりのワークショップや展示から始まり、毎回参加しているKINTAさん。益子の土を使った絵画の制作や、益子町内の東西南北の地点で採取した土を用いた巨大オブジェなど、その「赤子のような」土にこだわってきた。

5回目となる今回の作品の素材は、土ではなく農機具。役目を終えた古い道具たちだと言う。「土ではないけれど、やっぱり、土の地面に接していたものにこだわりたいと思って。どうも僕は、土の人みたいね」

土の人、ですか?
「馬場さん(土祭のコンセプトを立ち上げた初回と第2回の総合プロデューサー)は、空の人だったと思うんだよね。翼を持っている人。僕も空への憧れはあるんだけど、土から離れられないみたい」

今回の土祭で、K I N T Aさんの展示会場となるのは、益子町西部に在る星宮神社だ。昔から、夜空で人の目を引いてきた北斗七星は信仰の対象ともなり、その星を祀る星宮神社が栃木県の鬼怒川沿いを中心に茨城県や埼玉県にも分布する。中でも、益子の星宮神社は、八百年の歴史があり、古来より、この地域の数多の人の祈りや願いを集めてきた。

土の人が、空につながる場所に立つ。大地を耕し尽くしてきた農機具を用い、神の使いの「獣」をつくるという構想を持って。そしてまた、この神社がある「星の宮自治会」の人たちにも呼びかけて、参加者みんなで「星」をつくり、境内にちりばめる計画もあるそうだ。
点と点、人と人が繋がって、土と空を結ぶ時、どんな星座が描かれるのか、楽しみに秋を待ちたい。
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KINTAさんプログラム紹介ページ
http://hijisai.jp/program/c-03-3/
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『ヒジサイノート 3号』より転載。
益子の未知の日常を探る巻頭記事なども掲載した土祭2021の広報冊子『ヒジサイノート』は
土祭オンラインサイトでも送料のみで購入できます。
https://hijisai.stores.jp
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取材・執筆・写真|簑田理香(風景社)

 

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