七つの神社を巡る|中﨑透さん(4) 展示レポ|「神社の窓は何処につながる?」 ひかりのうつわ vessel of light

益子町の太平神社へ中﨑透さんの展示を見に行く。
神社に続く階段を上ると、正面に社があって、一見いつもの神社と同じように見えるが、社の横に階段が設置されていて、中に入ると、一瞬何処かの街へ瞬間移動したのかと目を疑うような光景が待っていた。

社の中は架空の夜の町へトリップ体験。
ライトボックスで作られた赤く光る煉瓦の煙突、光を放つタイル。
赤と青色の箱形のライトボックスは焼き物の窯をイメージしていると中﨑さんは話していて、中に入っているたくさんの器は中﨑さんが益子に滞在して制作したもので、さすが、大学で油絵の専攻だったと伺うが、絵付けも色合いも素晴らしい。
前列のうつわには文字が書いてある。

“Beauty is in the eye of the be holder”

どういう意味だろうか。

 

もう一点、奥にある、光る窓枠は異次元への入り口か、それとも日常に戻るドアなのか。

ここは本当は別次元にある益子の町で何処かに存在しているのかもしれない。
そこでは、益子焼の職人さんや陶芸家が火を使って焼き物を作るように、ロボットが明るいネオンの光で器を作り出しているのだろうか、
なんて想像してしまうほど、外の日常と中の展示のギャップに驚く

よく見ると、神社に元々ある天狗のお面や紙垂もある。
それらのものと同じように、中﨑さんの作品もアクリル板や土、ガラスと素材が天然か人工の違いはあるけれど、人の手で作り出し、命が吹き込まれていると感じた。

太平神社の左側を上っていくとぽっかりと開けた広場があって、テーブルと椅子があり、のんびりと休むことも出来る。

さらに上っていくと愛宕神社がある。
神社の正面の小さな窓をのぞくと赤い山形のライトボックスが見えた。
赤い鳥居を思わせる。
架空の益子町では各窓につながっていてお参りはいつでも出来るのだろうか、なんて、また想像してしまう。

来た道と反対の方へ下ると太平神社の裏に出る。
そのほとりの池からは音が聞こえる。
川崎義博さんの作品のサウンドインスタレーションの展示だ。

神社のある山全体が会場になっていて、日常と非日常が同時に楽しめる展示だと思った。

辞書で展示のタイトルの単語である“vessel “を調べると、「うつわ、容器、舟 」という意味である。
ライトボックスと土のうつわ、焼き物を神社が一つの舟のように全てを乗せて浮かんでいるようにも感じた。

中﨑さんは「アートの知識がある人もない人も楽しめるように作品を作ったので、いろんな見方で感じて、面白いと思ったら掘り下げてアートの世界を楽しんでもらえたら良いです。」と話していた。

美はどこにでも存在するし、受け手次第で、どのようにも感じられるものと考えるきっかけをもらった気がした。。

訪れてみて直に感じてほしい展示である。

会場|太平神社
会期|10月15日から11月14日までの金、土、日、祝日のみ(11月4日を含む)
10時から17時まで(太平神社の社内に入ることが出来るのは17時まで。展示のライトアップは22時まで。神社内は外灯がない為、足下にお気をつけください

土祭2021レポーター 横溝夕子

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