益子焼陶板アート|七つの伝統釉薬で彩る「笑い閻魔」|玄関口に設置された新たなシンボル

土祭 2021 レポーターの仁平です!

今年の土祭がいよいよ終盤となってきたわけですが、今回レポートさせて頂くのは土祭2021が終わっても、今後の益子町にずっと残るものです。

プログラム名は『益子焼陶板アート|七つの伝統釉薬で彩る「笑い閻魔」』。制作過程から拝見させていただきましたので、その模様をお伝えいたします!

益子の玄関口に設置される陶板アート

こちらのプログラム。その名称に情報がギュッと凝縮されていますが、ひとつひとつを簡単に説明すると、、、

まず、益子焼の陶板(陶器の板に図柄を描き、焼き付けたもの)でのアート作品制作になります。

で、その図柄の着色などに使用するのは、益子焼で使用されている「七つの伝統釉薬」とされる7色の釉薬です。

そしてどんなものになるのかというと、益子町:西明寺にある県指定文化財でもある「笑い閻魔」(わらいえんま)をキャラクターとして活用した作品。

肝心の設置場所については益子町の玄関口。益子駅の「益子駅前ポケットパーク」とされるロータリーの一角です。

益子駅から降りてきた方は必ず通るところですね!

目的を持った作品と、それに沿う遊び心と職人の技

今回の作品を構成する陶板がある程度揃ったということで、作品制作のディレクターを務める藤原陶房の藤原郁三さんのところへ伺いました。工房には作品が仮置きされていたのですが・・・

でっかい。。。

構成する陶板がすんごく多いんですね、というのが率直な感想。

約300点の陶板でこのアート作品になるそうです。

そして作品の中央部分には、遊び心あふれる仕掛けがあります。

藤原郁三さん:
「ただの画じゃ、そこにあっても素通りされちゃうでしょ。まず目に留まって、見てもらわないとね。それでこの笑い閻魔を見て笑顔になってもらい、益子観光へと行く後押しをしたい。」

※全体像について詳しくは記事後半で!

陶板ひとつひとつを見ていくと、職人の技と丁寧な仕事が詰まっています。

一番はなんといってもこういったグラデーションの処理。

グラデーションを持つ陶板がいくつもありますが、全体を見たときに陶板を跨いでもグラデーションのズレや違和感がまったくありません。

いわゆる組み立てた状態で色付けするならわかりますが、これはまったく逆。陶板ひとつひとつを仕上げてから並べて、全体が違和感ないようにしていくわけですから…

こういった陶板の完成にいたるまでには、何度も何度も塗り&焼きの作業の繰り返しがあったんだそうです。

また、塗料を塗って焼き上げると、毎回それがバリ(はみ出して固まった塗料や釉薬)となって陶板ごとの規定寸法を超えてしまいます。少ない陶板でできたアート作品ならそれも許容できるかもしれませんが、これだけパーツが多い作品となると話は別。

ひとつひとつのズレで全体が構成できなくなってしまうので、毎回丁寧にバリ取りをして形状を整えていきます。気が遠くなりますね・・・

製作過程の詳細については藤原陶房さんで期間限定の展示(詳しくは後述)をしているので、もっと詳しく知りたい方はそちらを見学されることをおすすめします。

完成したすべてのパーツ。駅前で施工開始

全ての陶板がそろった後はいよいよ設置。藤原工房を出て、いざ設置場所である益子駅前へ。

こちらが設置されるコンクリートの壁です。ここなら益子駅から役場方面に行くときにも良く見えます。

まずはすべての陶板を配置するための墨打ちから作業がスタートです。

そして陶板を貼るエリアが決まれば、あとはひたすら貼り付け&微調整を行っていきます。

やー・・・、こちらも結構気が遠くなりそうな作業ですね。。

天候にも恵まれ、特に大きなトラブルはなく作業は予定通りに進んだそうです。

「笑い閻魔」の完成披露会

益子駅に新しく設置された「笑い閻魔」は、11/3(祝)に完成披露会が行われました。

といっても、コロナ禍ですから大々的なものではなく、制作関係者のみの参加。ド・定番の除幕によるお披露目です。

こちらが設置された「笑い閻魔」の全体像です。

本家の笑い閻魔様との違いは、なんといっても目。本家は白い状態で瞳が描かれていませんが、こちらは表情を豊かにするために瞳を入れたんだそうです。

そして見る角度によって表情が変わる仕掛け。(GIFアニメーションにしました)

また伝統釉薬で作られたこちら作品は、見る時間帯やお日様の角度、天候などによっても見え方が変わるそうです。当日は晴天でしたから発色がきれいでしたねー!

ちなみにこの手法で着色された色は、これだけ紫外線を浴びる場所に設置されても変色しないそうです。何年たっても変わらずにこの発色であり続けるんだとか。

作品には見える変化の仕掛けがあるのに、作品自体はずっと変わらずにあり続ける。何とも奥深い話です。

「笑い閻魔」やこの作品が生まれた経緯についてはプログラムページに詳細が記されていますので、ぜひそちらをご確認ください。
http://hijisai.jp/program/j-03/

また、藤原陶房ビューイングルームではこの『七つの伝統釉薬で彩る「笑い閻魔」』の製作過程や色サンプル、各窯元の紹介などが期間限定で開催されています。詳細は藤原陶房さんのホームページをご確認ください。
http://fujiwaratobo.com/top.html

(土祭2021 レポーター :仁平 肇)

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