住民プロジェクト|益子参考館円座『昔ながらの暮らしの場であった民家を知ろう』-荒壁塗り-レポ

11月11日に、益子参考館で行われた「円座」シリーズのワークショップでは、細工場
の壁に土を塗り、修復するという作業行った。
その土は10月のワークショップで細工場の壁の下地を残して土を剥がし、その土から
作り、寝かせておいたものである。
敷地内の木々は紅葉が美しく、晴れ渡る空の下、作業が行われた。

円座とは、人びとが輪になって腰かけること。
参考館の「円座」は資料によると、来館者に濱田庄司が理想とした昔ながらの暮らし
の一部である古民家の作りについての、知識を得て、感じてもらうことにより、多く
の方にその価値に目を向けていただく機会となることを望む企画であるという。

参加者は、建築家、庭師、大学の先生などそれぞれの職業に関わる人たちや、古い建
物や暮らしに関心を持っている人、地元で昔から参考館に通っている人など多様で、
普段は見ることしか出来ない建物の修繕を直に体験できる貴重な機会を楽しんでい
た。

講師の大工の望月崇史さんと設計士の萩原潤さんに教えてもらいながら、共に作業を
した。
誰もが土と向き合い、手を動かし、協力しあい、土壁の前では平等であった。

【下地の修繕】

  ・竹小舞、藁縄を修繕する。

土壁の内部の構造や補修の仕方を望月さんが作ってくれた模型で学んだ。

参加者の中に竹細工の技術を持った方がいて、実際に竹を割いて見せてくれた。
専用のなまくらという刃物で竹をトンと割ると面白いようにストンと切れた。

【荒壁塗り】

  ・前回練り上げた土の状態を確認し、適当な固さに整える。

フネ(木で作った枠)の中に寝かせておいた土と、石灰と水を混ぜる。
前回の参加者たちで、壁を壊して、その土を砕いたり、原土を砕いたり、藁を刻んで
摺り合わせたり、みんなで協力して作った土壁の土。
ただの土ではない、みんなの気持ちがこもった土になっていると思った。

ここで、左官士の都倉さん(皇居などの左官のお仕事もされているそうです)の土壁
塗りの実演も
見ることができた。
鏝板に乗せた土をひょいと鏝で取り、壁に置き、鏝で伸していく。
一連の動作は無駄がなく、流れるようで美しかった。
見事な技に感嘆し、このワークショップに関心を持って、何か少しでも協力出来ない
かと来てくれた都倉さんの心意気に感動した。
参考館の土壁が、人と人とをつないでいく。

みんなが集まって見ている姿は、持っている者が知恵や技術を惜しみなく出し合い、
それを受けた者は日々の暮らしに生かしていったり、
誰かの為に使ったり、つないでいく、円(縁)座の姿ではないかと感じた。

参考館の方たちが濱田庄司の遺した暮らしの場であった古民家を、大切に守り、受け
継いでいて、その場を人びとが集う場として開いている。
開かれているという空気感や思いの温かさが、集まった人たちの心を和ませ、自然と
みんなが笑顔になっていると思った。

  1、外壁塗り

軽々とやっているように見えた作業も、実際にやると鏝板に土を取ることもたやすく
なく、鏝で壁に塗ることも至難の業である。
木部や荒縄上にのせるのが難しい。うまく定着できずにボタボタと土を落としてしま
う。
きっと、一朝一夕にはいかずに、昔の人は、日々の協同作業の中で技が受け継がれ、
土壁は維持されてきたのだと改めて思った。

  2、内側の壁塗り

内側には、荒縄が入っていないので、一度塗った上に藁を貼り付けてその上からもう
一度塗る。
平らに伸していくのはこつがいる。梯子を使っての天井近くの作業は大変で、高いと
ころが大丈夫な人が率先してやっていた。
予定時間を超えての作業は、講師のお二人だけでなく、何人かが残って手伝ってい
た。
それはきっと、魅力にはまったのか、土壁との間にできた絆みたいなものに、立ち去
りがたく思ったのかもしれない。

仕上げに作業が終わったという印に、壁に鏝の縁でVの字を入れていく。
壁一面のたくさんのVは、なんだか、うまくいった、成功した!victory のVに見え
た。

充実した気持ちで、片付けと掃除をして、終了した。

【関わる人、つながる人、つなげる人の思い】

講師の望月さんと萩原さんは参考館の建物の土壁が崩れているのを知って、気になっ
ていたそうだ。
望月さんは会津での古民家の仕事や、東日本大震災の後に、解体を前提とした、無垢
の木を使い、床にはもみ殻、茅葺きの屋根という仮設住宅を建設していたという。そ
の建設の親方の教えを生かしているという。

萩原さんは、益子の陶芸家と話した体験から、その人が、経験を通して積み重ねてき
たものや知識があれば、世代が違っても対話をすることが出来ると感じたそうだ。

お二人は、古民家の再生をするということは、その土地の文化を知り、知恵を受け継
ぎ、伝えていくことだと、話していた。
全ての作業には、意味があって、正しい方法でやらないと、出来ないし、長くもたな
い。
土壁を作ることが日常ではない今は、誰かがその技術をつないでいかないと廃れて
いってしまう。
まずは興味を持ってもらい、体験してみる。そのきっかけをもらったのだ。

お二人がこのワークショップ通して伝えたかったことは、
年代も職業も違う集まった人たちに届いたと、みなさんの表情や言葉によって、感じ
ることができた。

毎日の通勤の道沿いに、崩れかかった土壁の家があるのだが、土壁塗りを体験した後
には、その壁を、親しみを持って見ている自分に気がついた。
文化とは人が作り、つないできたものだと、言葉や知識ではなく心からそう思えた
ワークショップだった。

ワークショップで塗った荒壁は、徐々に乾いてきているそうです。
どんな風に仕上がったのか、そもそも土壁ってどういうものと気になった方は、ぜ
ひ、益子参考館にお出かけください。

住民プロジェクト|益子参考館円座
『昔ながらの暮らしの場であった民家を知ろう』-荒壁塗り-
 講師 望月崇史氏(大工) 講師・案内 萩原潤氏(設計士)

(土祭2021レポーター 横溝夕子)

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