参加レポート|風景社セッション第1回-今、住んでいる、ここの地域の未来を考え語りたくなる

7月10日(土)、ヒジノワcafe&spaceにて、風景社セッション2021「その先の、風景を語ろう。」の第1回目が行われました。

風景社は、2020年8月に益子町を拠点に設立された、地域の特色を守り、次世代に繋げていく事を目的として活動を行なっている団体であり、このトークセッションを自主企画して運営しています。

今回を皮切りに、「これからこの地域でどう生きるか」「地域づくりを通してどんな風景を未来に残すか」を考える全6回のセミナーが毎月行われます。各回の流れは第1部がゲストによる講演、続いて第2部は、風景社がホストとなって行う、各回のテーマに関係する活動をしている県内在住のコメンテイターとのトークセッション、といった形式です。


【今回のゲストは指出一正さん。】


【コメンテイターは遠藤隼さん。】

今回の記事では、なんの前情報も持たずに聞きに行った、わたし橋口が、トークセッションを聞いて考えたことや率直な一個人の意見を書かせていただきます。

 

ソトコト編集長・指出一正さんが土祭にやってきた

「ソトコト」という雑誌をご存知だろうか。記事の最後にソトコトオンラインのリンクを貼っておくので「よく知らない!」「気になる!」という方は、雑誌でなくてもコンセプトを知ることができるのでぜひご覧いただきたい。

私は、地方移住して成功した人やイケてる地方のイケてるコミュニティや売れてるグッズが載っているお高めの雑誌。というイメージを持っていた。


【雑誌ソトコト】

つまり、ソトコトについて、毎回読み込んでいるわけではなくぼんやりとした認識。しかし、イケてる雑誌を作っている編集長さんが今回やってくる、ということは、すごいことなのではないか、ということはわかっていた。更に、今話題の『SDGs』がテーマに絡んでいる。時代の最先端の話が聞けそう! 会場である、ヒジノワへ向かう私の心は踊っていた。


【全国津々浦々。指出さんが訪れたユニークなコミュニティーの裏話をふむふむと聞く。】

 

結論;たくさんの種を蒔いて帰られました。

今回のトークセッションのテーマは、「持続可能な地域づくりーローカルから捉え直すSDGs」だ。指出さんが携わっていたり、継続して定点観察していたりする地域の紹介を、これでもか、というほどしていただけた。その内容が、どれも聞いているだけでワクワクが止まらない、おしゃれで楽しそうな事例ばかり。成功している事例なので(当事者の皆さんにご苦労や葛藤は少なからずあるとはお察ししますが)、負の香りは一切無し。

だからワクワクして当然なのだが、みなさん、大人(社会人)になってから文化祭の準備している時みたいにワクワクすることってあります?自分が携わっているわけではないのに、聞いているだけで、ワクワクが止まらない。それに、なぜだか、「考えなさい。」と言われているわけでもないのに、今自分が住んでいる場所(わたしの場合は益子町)、また今まで住んでいた場所では、どんな取り組みができるだろうか…なんて考え始めてしまう始末。本当に、指出さん、お話が上手い。そして、コメンテイターの遠藤隼さん(市貝町・サシバの里自然学校校長)も言っていたが、言葉選びが絶妙。万人のハートに届くキーワードを選んで伝えているのだと思う。ワクワクの種、聞いている全員の心に蒔かれたのではないだろうか。

その中でも、私の心に残ったワードを2つ、ご紹介。

「曖昧なものが社会を作っていく」

指出さんの、未来の地域のあり方についての見解だ。これからは、観光でもなく移住でもなく、白黒はっきりつけない曖昧なものがコミュニティを形作っていくのではないか、と言っていた。これも、なんとなくの結論だそうだ。どんな住み方の人も生き方の人もウェルカムな、型や枠にはまらない、だけどゆるい柔らかい囲いは存在して。とにかく誰もが生きやすい世界をなんとなく想像した。今巷で溢れる『いいね!(賞賛や承認)』ではなく『いいよ〜(許容)』って感じかな。

「あさっての社会を考える」

明日までに何かすることは、追い詰められている感じがする。しかし、あさってまでに、と考えてやる作業は余裕がある。そんな中で、光るアイデアが生まれたり、全然期待もしていなかった相乗効果みたいなものや、びっくりする化学反応が起きたりする、らしい。実際に、ひょんなことから成功をおさめた施設の事例もお聞きした。何事も、きちんとこなしていくことは、大切。だが、視点を変えたり、ちょっと休憩したり、普段会わない人にあったり、そんなことからとんとん拍子に上手くいくことって確かにある。このレポートもまさに、あさってまでに書ければ良い、と思って書いている。気楽さが伝わりますか?笑

 

里山の住人は人だけではない

第1部の指出さんの講演に引き続き、第2部では前述の、サシバの里自然学校の校長先生・遠藤隼さんとのトークセッションが、風景社の廣瀬俊介さんのコーディネートで行われた。


【おふたりの熱いトークが繰り広げられた】

遠藤さんは、市貝町にある『サシバの里自然学校』で、主に、親子・未就学児・小学生それぞれを対象とした生き物に関する教室を開催している。遠藤さんのエピソードはどれも、生き生きとしてみずみずしい潤いがある内容ばかりで、本当に心からタガメのことが好きで、やっと本物を見つけられた少年2人の話にはうるっときてしまった。(タガメって、本当に出会うのが難しいらしいです。)

指出さん、遠藤さん、おふたりに共通しているのは里山についての見解。遠藤さん曰く、里山の住人は人だけではない。人、生き物、それぞれに暮らしやすい里山を目指していきたい。とのこと。日本は、国土が狭いので、古来から人が住んでいる場所と自然とが混ざらざるを得なかった。混ざっていることが悪いことではなく、日本人としてその環境が心地よいのではないか。

指出さんも、里山が人だけのものではないことに共感。人だけではないもの=宮澤賢治の世界としても日本人には身近である、と言っていた。「宮澤賢治」の名前が出てくるだけで、一気に自然が身近になりません?私の脳内では、一気にどんぐり・風・山猫・草も鳥もモグラもそれぞれの顔に表情がついたイメージに変換された。彼らは仲間だという気さえしてきた。

とにかく希望を持って帰路へ


【益子にもある、里山の風景。人のほか、たくさんの仲間たちが暮らす】

あっという間の2時間だった。

ワクワクの種が発芽し、希望となり、何かしなくては。何かできるのでは。と心を揺さぶられたまま車に乗り込み帰宅。私にとってこのトークセッションは、意識の変化が起こるくらい濃厚な時間となった。

SDGsについてお堅い話を聞けるのかと思っていた。でも違った。自分の近くの人と、自分の近くの土地の話をぼんやり考えたり、おしゃべりしたり、そんなことで地域は、社会は、未来は着実に変わっていくのだ。私の経験した、いい意味での妄想は、持続可能な地域づくりへの一歩となった。


【あと5回予定しているトークセッション。現地で直接聞くほか、オンデマンドでも視聴可能です。】

風景社セッション2021「その先の、風景を語ろう。」は、現地(ヒジノワcafe&space)での講演会のほか、オンデマンドでも配信しています。事前申し込みが必要です。次回のプログラムについては、土祭プログラムページ http://hijisai.jp/program/k-04-2/ 、申し込み方法についてはPeatixのページ https://peatix.com/event/1934651/view をご覧ください。

 

ソトコトオンライン
https://sotokoto-online.jp

サシバの里自然学校 
https://www.sashiba-ns.com 

 

(土祭レポーター 橋口奈津子、写真:簑田理香、橋口奈津子)

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