土祭2015アルバム|まちなか映画館 太平座

のれんをくぐると、まちのなかの小さな映画館。

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企画概要

かつて益子にあり「映画を見に行く」という行為を通して
町の社交場ともなっていた「まちなかの映画館」を会期中に旧市街地に出現させ、
さまざまな映画・映像作品を見て「識る」場、そして、町内外の人の交流を「結ぶ」場をつくる。
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この文は、土祭2015「個別企画09 まちなか映画館 太平座 企画書」からの抜粋です。
今回のアルバムでは、構想、準備、そして会期中の様子を振り返ります。

 *うまれたわけ

2014年の6月から、町内各地で風土・風景を読み解くプロジェクトの聞き取りを進めると、年配のみなさんが目を輝かせて、語ってくださることの共通項がみえてきました。「昔の川には、こんな魚や生き物がいた!」ということと「近所で旅回りの一座の芝居や映画を観に行く場所があって、そこにいくと親戚も友達も集まっていて…」という思い出です。
興行師が木戸銭をとり映画を掛ける家があったこと(上大羽地区)、農村歌舞伎舞台を力をあわせてつくり旅回りの一座を呼んでいたこと(山本地区)、歩いて行けるまちなかに仮説や常設の映画館があったこと(七井・田町地区)…、娯楽もテレビもない時代、多くの人がひとつところに集い、観て笑って語り合う時間を共有する日々の記憶。
土祭では、演奏会と夕焼けバーを開く「土祭広場」を、そのような集いの場と考えていますが、3回目の土祭では、映画をまんなかにおいて人や地域を「結ぶ」場も作れないか?という発想から始まったのが、<土祭の会期中に、人が集まる「まちなかの映画館」を創出する>というプロジェクトでした。

*土祭から生まれたヒジノワを会場に

新月から満月の間だけ出現する映画館をどこにつくるか。
それはどちらかというと、今振り返ると「会場の方から呼ばれた」ようにも思います。初回、2回目の「作品の展示会場」となった、ヒジノワ。今回は「アートの展示ではない」と早くから考えていました。ふたたび、企画書から抜粋します。

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会場選定の意図

2009年の土祭で、築100年の空き家を改修し、その後、有志メンバーが「また空き家に戻すのはもったいない、人が集う場として活用したい」と、ボランティアで企画運営している「ヒジノワ」。一度空き家になって再び「集う場」になった(しかしこの1年は中心メンバーも多忙につき活動が停滞気味になっている)空間に、時代の流れとともに消失した「集う場」を土祭の会期中に作り出すことで、また新しい動きへと繋げたい。
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*企画興行師は、町の人々を中心に

上映する映画を誰が決め、どんな演出や場作りをするか、それはもちろん町の方たちの力で楽しみながら(忙しい思いで苦しみながら?)進めていきましょう、と、これまでに映画の自主上映会を企画した方、自主制作で映画制作を進めている方、祭の記録を撮っている方やその映像化を考えている方などを中心に企画者となっていただき、16日間の組み立てを行っていきました。

企画興行師のみなさんや上映作品のラインナップ、
関連するトークのゲストなどの紹介は →こちらで

また、初夏の頃には、企画にお名前を借りた、50年前に閉館した「太平座」で映写技師をしていた方や経営者のご家族の方などからお話を伺う場ももうけました。

中学卒業後に太平座で働き始め、国家資格をとり映写技師として益子と近辺の町で
「映画で集う場」を作り続けてきた石原賢さん。
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企画興行師チームで都合のつく方10名でヒジノワに集まり、当時の館内の雰囲気や技術的なことなど貴重なお話をたくさんうかがいました。その内容は、ガイドブック『土祭という旅へ』のコラムでもご紹介しています。
 
経営者のご家族宅の倉庫の柳行李の中には開館当時のポスターがたくさん!
一部をお借りし裏打ちして上映室の壁に展示しました。(写真は会期中の様子)
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*会期中のご報告〜アフタートークを大切に

まちのなかの小さな映画館としては、映画を観た後に制作者のお話を聞いたり、お茶をしながら友人と感想を語り合える時間を大切にしたい。各企画チームのみなさんは、監督をお呼びしてのアフタートークや対談、テーマに即した座談やトークセッション、それからヒジノワカフェにゲスト出店を招いての連動企画など、趣向をこらしました。

『ASAHIZA 人間は、どこへ行く』藤井光監督を招いてのアフタートーク。
映画を見てお話を聞くことでさらに広がり深まる思いがありました。聞き手は小野悦子さん。
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『渦潮』『渦汐』川本直人監督と座談。聞き手は『ハトを、飛ばす』の町田泰彦さん
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映画企画と連動してカフェ出店の道食堂121チームは、東北芸工大田賀陽介研究室。
大学のある山形は益子と国道121で繋がっています。その沿線の食材で丁寧に作り込まれたメニューは大好評でした。
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インドの寺院で500年も続く「毎日10万食のカレーを誰に対しても無料で提供」する食堂を描いた『聖なる食卓』。上映時には、主催者のみなさんもターバン姿でカレーランチを提供。
(「無料ですか?」というツッコミもあったとかなかったとか)
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ドイツの出版社を追うドキュメント『世界でいちばん美しい本をつくる男 シュタイデルとの旅』を企画上映してくださったチームは、上映後に「映画のある場所 本のある場所」をテーマに来場のみなさんと一体となったトークショーを。右から編集者の南陀楼綾繁さん、益子ハナメガネ商会のマスダモモエさん、コミュニティシネマセンター事務局長の岩崎ゆう子さん。

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まちなか映画館の企画は、ヒジノワを飛び出して夜の土舞台でも。26日の土祭広場「子どもの日」企画で、新町☆組が制作した「益子祇園祭」と、川本監督が町内の子どもたちとワークショップで制作したシネカリグラフィー作品が、地層の壁のスクリーンに!
3回目の土祭での初めての試みを、広場に集った町内外のみんなで楽しみました。
祭り映像

1回目の土祭で生まれたヒジノワが、映画や本や食を通して、ふたたび「結ぶ」場になった「まちなか映画館」。16日間の短い開館でしたが、いくつかの種があらたに蒔かれた場でもありました。関わったみなさんやご来場いただいたみなさんが、これからの日々でつくる、さまざまな「場」が、健やかな「結び」を生んで行くことと思います。

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(事務局 簑田|撮影 長田朋子 矢野津々美 簑田理香)

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