実践(1)皆既月食にどんど焼きで器を焼く

「ドウメキのコウホネ」では、多層的な時間軸を体験していただくワークショップなり実践を、4月から既に行っております。そのうちのいくつかをご紹介いたします。

 

「<農と藝術>皆既月食の日にどんど焼きのやぐらを組んで器を焼く」と銘打って伊藤洋志さん主催のナリワイを主軸に、西明寺地区自治会の方、青年団西友会のみなさまや賛同者と一緒に作業を終えてぱしゃり(以下全て写真は矢野津津美)

 

1。最初、「コウホネ田んぼ」は長年耕作を放置された荒れ地だった。地元のひと曰く「水も少なく痩せて地力がない」西明寺にとって、「コウホネ田んぼ」は雑木山に囲まれ澄んだ水の湧き出る恵まれた場所に思えた。専業農家として長年ここで生活をしてきたひとの目を通してみれば、篠に茂ってもなお光って見えたことだろう。とはいえ、荒れた田んぼは8枚。これだけの篠を刈るだけでも一苦労。このひとつふたつの苦労を<ひとつふたつ楽しむ>へと転換するのが企画者町田の役割?

 

2。そもそも、この地にコウホネの花を再度咲かせたい、という農夫の「希望」が『ドウメキのコウホネ』プロジェクトの原動力としてある。おそらく、いままでも舞を舞うような面白い農業をしてきた農夫にとって、夢と現の境は希薄なのだろう。明日ひとつの美味しいキュウリをならしたいのと同じ地平で、遠い未来コウホネが咲くのを望んでいる。山を整理し田を起こし、その夢が現実となる頃にこの場所は、地域にとってひとつの指標となるような場所になっているだろう。それにしてもそれはひとりの力では成し遂げられないし、だからこそこの場所は誰のものでもなく、関わる全員の理想の土地でありえるのではないのか

 

3。人の力を注ぐ、それも新しい方法でそれを成し遂げているナリワイの伊藤洋志さんの力を借りたのは、労働が、実は苦役ではなく楽しいことなのだということを地元の人に改めて感じて欲しかったから。皆既月食の4月4日に決行された作業には西明寺の青年団である西友会の面々も集い、その姿は頼もしい。天気はあいにくの曇り空だったが、若い人の晴れ晴れとした顔が印象的だった

 

4。どんど焼きの準備と平行し、コウホネの種が埋まっているかもしれない地層を堀り、天地を返す作業を行った。ナリワイの参加者たちはこのコウホネのプロジェクトのことを始めて聞いたのだけれど、おもしろいおもしろい、と手伝ってくれた

 

5。竹が竹やぶから切り出されて

 

6。どんど焼きのベースとなる朽ちた木が組まれ

 

7。中央に神木が据えられ、火力を上げ爆竹の役割も果たす竹によって覆われた

 

8。火がある所に器あり、「益子焼」なんて名前がつく前からきっとこの土地では火の中から器が誕生していたことだろう。こうして田に関わり火の準備をしていると、取れた土から器を焼くということがとても自然のことだということに気がつく。4月4日から5日にかけて行われたこの企画は、個人的にさまざまな思考的な飛躍をもたらしてくれた。そのうちのいくつかの飛躍に気がついたのはごく最近のことだ。その話は、また後日(文責|町田)

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