「益子の原土を継ぐ」染織家 中村 曙生さん

益子で採れる原土を用いて陶芸家・染織家・日本画家・左官、24名の作家たちが、
新しい表現に挑戦しています。
益子の原土「北郷谷黄土」「新福寺桜土」「大津沢ボクリ土」の3種類を使用し制作。
作品は、土祭期間中、展示会場のひとつとなる、陶芸メッセ内 旧濱田邸で、展示します。
24名の作家の、作品への想いを紹介します。

染織家 中村 曙生さんの、作品への想いを紹介します。 
益子の原土を継ぐ 中村曙生さん

中村さんの細工場は、道祖土地区にあり、深い森に囲まれた場所にありました。
中村さんは、宇都宮市出身で、学生時代は東京にいたそうです。
初めから染織をしていたわけではなく、東京ではデザインの仕事をしながら、
夜、染織の教室へ行き、学び続けていました。
その後に、住まいを益子町に移し、日下田藍染工房で6年間修行。
中村さんはにこりと微笑んで、今は、益子町が故郷ですよとおっしゃいました。

「陶芸家の若杉集さんと、染織家の宮澤美ち子さんと一緒に、採掘してきた赤い土があります。
3種類の原土と、採掘してきた赤い土を使用します。
乳鉢で擦って、土を顔料にしました。
原土は水簸したのと、水簸をしていないのも作ってみました。
私は、草木染めもするのですが、植物から引き出せる色って、いろいろあるんですよ。
原土を染めてみて、今まで気が付かなかった世界に足を踏み入れた気分で、
とてもステキなことだなと思いました。
ものに対する見方が深くなったようにも思います。
土の中にも、植物の中にも色があるのですね。気が付かなかっただけで。
自然の中の色を導き出してみて、また、違った色がみえてきました。」

原土について伺いました。
「自然の色が、どのように表現できるのか。世界の景色を土で出したいと思っています。
陶芸家さんのように、原土を粘土にする必要がないのですが、水簸して粘土にもしてみました。
紙にテストをしてみると、粘土はあまり色が乗らなくて、
水簸して底にたまった砂などに、色が出ることがわかりました。
染めるということだと、粘土にすることにこだわらなくてもいいのだなと知りました。
でも、水簸することによって、わかったこともあり、手間がかかりましたが面白かったです。
こういう仕事をしてみて、いろんなものを、染められる可能性があるのだと思いました。」

小さな小道の右側が細工場、左側には、布を乾かす為に、ビニールハウスが建てられてあります。
ビニールハウスはとても広く、ここで、紙にテストしたのを1枚1枚広げてくださいました。

益子の原土を継ぐ 中村曙生さん

藍が入っている壷を、中村さんはゆっくりとかき混ぜました。
近くには、布を洗う深く幅がある洗面台、大きな釜もありました。
藍の独特の香りつ包まれながら、中村さんがご自分で作った
型紙や道具などを見せていただきました。

「私は、型染め、藍染めを中心に作品を作っています。
土祭の作品には、型染めの技法を取り入れ、原土で染めますが、藍染めも一部入れて、
土と藍をコラボさせようと思っています。
飾り布を3枚出す予定でいて、中央に幅が広い布と、左右には細い布。
幅が広い布には、自然を表したかったので、樹木をデザインしてみました。
型で染めるというのは、紅型と同じですよ。
糊が置かれたところところが、染まらないようになりますね。
型紙は、自分でデザインをおこして、自分で彫ります。」

細工場では、これから原土と藍で染められる布が、そこにありました。
細かい模様が浮かび上がっています。

益子の原土を継ぐ 中村曙生さん

「自然豊かなこの場所に、つい引きこもって作品作りをしてしまうのですが、
益子の祭りの祇園祭では、城内という地区のお囃子を
ずっとやっていて、外に出るきっかけになりました。
そこで知り合った方達とのつながりが、地域の人達とのかかわりを持たせてもらったのです。
お祭りの皆さんと知り合えて、よかったです。
また、風土を読み解くという、地域の人達が集まって話をする会にも参加しました。
新しい世界が開けた感じがしました。
益子の良さを再認識し、人と話す、つき合うって、大切だと思いました。」

中村さんは、草木染めも大事な仕事ですよと、ショールを肩に乗せました。
絹なので、光沢があります。
草木の息吹、秘めている色、その色を引き出す草木染めという技法。
草木染めの作品は、渋く淡い色合いだと思っていたので、
こんなに鮮やかだとは、思いもしませんでした。

「土祭を通して、益子の見方が変わりました。
いろんな人が来てくださるといいなと思います。
第1回目の土祭では、日下田藍染工房の入り口で、
スタンプラリーのハンコ押しのボランティアをしていたんですよ。
今回の土祭、広がっていくといいですね。
私は、今回、ワークショップをやろうと思っています。
自分の手で触る、自分で色を付けてみないと、興味の度合いが変わりますよね。
1つのことを共有することで、開けるものがあると思っています。」

益子の原土を継ぐ 中村曙生さん

「ここは、イノシシが出てきたりもしますが、自然がとても豊かで、
月や星もキレイで、暮らしていると、私も自然の一員なんだと感じます。
好きなことをして暮らしているだけなのですが、
でも、納得いく作品を作りたいという気持ちが強いです。
それも自然体に。いつか、納得がいく作品ができたらいいなと思っています。」

原土と藍がコラボされた中村さんの作品。
思いもしない色合いに、出会えるかもしれません。

(土祭広報チーム  仲野 沙登美)

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