原土(つち)を通して言葉を交わす

益子由来の三種の土を用いたプロジェクト。今回の土祭では、「継ぐ」というテーマの企画を

陶芸メッセ・益子内を中心に展開します。その会場の一つである、「旧濱田邸」では、「益子

の原土を継ぐ」の展示会場となります。この展示は、北郷谷黄土、新福寺桜土、大津沢ボクリ

土を使い、陶芸家、染織家、左官、画家の方々、総勢24名が作品を制作し旧濱田邸で作品の展

示を行います。

〈「益子の原土を継ぐ」メンバーによる会合の様子〉

三種の土の内の一つ北郷谷黄土を参加作家で採掘することから始め、各々に土を試用しこれま

で何度もメンバーで会合を重ねてきました。これらの粘土は時に扱いずらくもあります。その

扱いずらさからなのか、原土へ向き合うメンバーの会話の中では、各々に取り組んできた試作

を通して互いに質問をし、言葉による技術の交換、共有も行われました。

会話の中には火、水、土、植物、地質、地層、歴史から現在を通してのこと等、土を通し多く

の事柄についての言葉が重なりあいます。

これまで土について交わした対話も貴重な資料として対話録として記録を行って来ています。

第五回目の会合(2015年7月5日)では、展示会場構成のディレクションをする。環境デザイン

に携わる田賀陽介氏と共に会場構成の打ち合わせを行いました。田賀氏は仕事は場を読み解き

場をあるべき状態へと整えます。展示会場であるこの場所を、生かしながら展示を行いたいと

考えているとメンバーに伝えました。

〈メンバーによる会場の見学と検討〉

旧濱田邸は、濱田庄司が母屋兼作業場として使用していた建物です。

江戸時代後期に、隣町の市貝町市塙で建築され、その後、茂木町に移築されたものを、

濱田が気に入り、買い求めました。昭和5年に自宅敷地内に移築し、母屋として使用。

国内外から濱田を募って訪れる訪問者たちとの交流の場でもありました。また、

囲炉裏のそばには、蹴ロクロと手ロクロがあり、長屋門内の仕事場や細工場とともに、

作陶の中心になっていました。平成元年、陶芸メッセ・益子内に移築保存されました。

 

〈陶工の若杉集さんの工房で水簸について説明を受ける。〉

〈手越し粘土職人をしていた吉沢仁さんのもとで、手越し粘土のこれまでについて伺う。〉

 打ち合わせの後日、田賀陽介さんがweb上で掲載した文章を紹介します。

「益子町由来の3つの原土についての技術的な情報交換をおこなう。現代の文明 生活を送って

いると、簡単にモノが何でも 出来てしまうと思いがち。素材の個性を生かし、ものをかたちづ

くることの難しさや思考を目の当たりにして、改めてものに対峙することの大切さを知る。」

引用文:田賀陽介

ものごとに真摯に向き合うことで、共有でき、伝えることができることの重要性をメンバーから

学びました。今後、各々のメンバーの試みやその思いを随時ブログで紹介していきます。

〈事務局 萩原〉

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