オープンアトリエーツアー|KINTAさんのアトリエで「土の時計づくりワークショップ」

『 ―失敗はない。全部を成功にするー KINTAさんのもの作りワールドにお邪魔しました!』

10月13日、小雨が降ったり止んだりとしている中、益子町在住の造形作家のKINTAさんのアトリエを訪ねた。

小高い丘へ続く道を歩いて行くとそこは、森の中の遊園地のようだった。
作品である大きな白馬やカメレオン、どこかユーモラスな犬のオブジェなどがあちらこちらに点在し、アトラクションのようにオールドカーまである。
コンテナを利用して作ったというショップはおもちゃ箱のようでかわいい。
新しく増築したというギャラリーは森へつづく窓から、外の景色を眺められる。
大きないろんな木がパッチワークされた素敵なテーブル(もちろん、KINTAさん作)で、子どもから大人まで参加するワークショップが行われた。

天気ははっきりしないけれど、KINTAさんのユニークなセンスの楽しいトークで、笑いが絶えない時間となった。

 

   

アトリエ見学

KINTAさんの仕事は多岐にわたる。
なんでも、「欲しいものがあったら、まず作ってみて、作れなかったら、買うことを考える。」というのが基本だそうだ。
広いアトリエには、木を扱う仕事、鉄を扱う仕事、陶芸、書や絵などそれぞれの作業場があり、説明してもらいながら廻る。
参加者にはKINTAさんの作品のファンの方もいてどんな所でどんな風に作られているのかを知る貴重な機会となって、好奇心いっぱいに質問が飛び交った。

陶芸の作業場では窯や乾燥中の陶器を見たり、絵を描く作業場では制作中のラーメン屋さんの注文の大きな絵を見せて貰ったりした。
一番盛り上がったのは、鉄工場で今回の土祭で星の宮神社に展示した神獣(古い農機具などの鉄の部品を溶接した巨大なオブジェ)制作秘話である。
「溶接など制作に没頭していたら、作業の終わりにふと見上げたら、神獣が工場の天井近くまでの高さになっていて、出入り口を越していた。」とKINTAさん。
なんて純粋に制作している方だろう。
その後、仲間によって、無事に搬出(救出!)して展示出来たと聞き、一同大爆笑した。

 

 

時計制作

今回の時計制作には、益子町の最東、最西、最南、最北で採取した4地点の土を使う事が提案されていた。
なんと素敵なアイデアだろう!
それは、KINTAさんが6年前に採取した土で、2015年の土祭では、土という形象文字の立体に4つの土を塗り込んで、益子の心象風景を表した作品となった。

時計は木の丸い盤に色を塗ったり絵を描いたりと自由にしていいとのことで、みんなそれぞれのイメージしたものを作る。
益子の4つの土はそれぞれ微妙に色が異なり、木工用ボンドを混ぜて絵の具のように塗る。
絵を描いたり、文字を描いたり、マスキングテープを貼って養生したり(後でテープを接がすと、色を塗っていないシャープな線が出来る)、土だけでなく何色の絵の具でも選ぶ事が出来た。

「北の土を取って。」「私は東の土を塗ってみよう。」「ここには南の土を塗ってみようかな。」
とみなさん。どんな思いを込めて、東西南北の土を塗っていたのだろうか。

みなさんの楽しんでいる姿を見て、私は考えた。
畑でも庭でもなく、陶芸でもなく、土に触れる。
土を塗るという行為は、日常にて土を取り入れる方法、手段となり得ないだろうかと。

KINTAさんは「もの作りの中で、失敗はないんだ。どんな風でも必ず成功に持って行く。」と話してくれた。
作品の力強さの中にはいろんなものを受け止め、発展させていくパワーが隠されていたんだと納得した。
そんな話を聞いて、みんな安心して思い思いの時計を作っていった。
最後に塗った土や絵の具をドライヤーで乾かしたら、針をつけて貰い、仕上がった。

作ることは、今の自分を知ること

出来上がったオリジナルの時計を持って、みなさん達成感に溢れていた。
可愛らしいもの、シンプルながらセンスの良さが伺えるもの、エスニックな感じ、文字に込められている思いが溢れるものなど、世界に一つしかない時計となっていた。

「手を動かして何かを作るということが久しぶりで、楽しかった。」
「大人になると、日常の中で純粋に絵を描くということをしないので、久しぶりに出来て良かった。」
「時計作りだけでなく、みなさんの軽快なトークが面白かった。」
参加者のみなさんには充実した時間となったようだ。

最後にKINTAさんが
「みなさん、迷わず、好きなように作っていたのが、良かった。
 気負わないで、素のままの自分で作ると、面白いものが出来るし、今の自分のいる所も分かるんだ。
 こちらも勉強させて貰った。」
と話してくれた。

自由で温かい雰囲気の中で参加者の方たちが、のびのびと制作できて、とても良い作品が出来上がり、楽しいワークショップとなった。
これもKINTAワールドの魔法にかかったということだろうか。

「今の自分を知るということ」、ものを作るということ以外でも、大事な深いことだと感じた。
まずは、今の自分で出来ることをやる。そこから始めてみる。そして、次の一歩が見えてくる。
そうやって、KINTAさんも作品を作りつづけて来たのだとしたら、失敗なんてない毎日が待っているに違いない。

土祭2021レポーター 横溝夕子 

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