ウィンドウアート・レポ|空を泳ぐクジラと土瓶

7月22日(木)、城内坂にある『dAgora』のオフィス(陶庫・横)とその隣の『山水の店みなかわ』で、陶芸家の堀水小夜さんを中心としたウィンドウアートのワークショップが開催されました。今回も、一般の参加者を募り、みんなで窓に絵を描いていきます。

見方を変えると面白い

まず、dAgoraの窓に辿り着いた私の目に飛び込んできたのは、大きなクジラ。それから、周りにたくさんの魚たち。

そう、今回のテーマは、dAgoraの窓の方は『海』です。オフィスの方のリクエストでこのテーマになったのだとか。

一般の参加者の方の多くは子どもたち。みんな、思い思いに海の生き物を描いていきます。中には人魚も。気持ちよさそうに、泳いでいます。

 

実は、この大きな窓の上部に描かれたクジラとシロクマは、小夜さんが陶芸作品でも描いているキャラクターです。このキャラクターが生まれたきっかけは、1冊の絵本だったそう。

『ツリーハウス』(ロナルド・トルマン、マライヤ・トルマン 作、西村書店)

ボローニャ国際絵本原画展を板橋美術館へ見に行ったときこの絵本に出合ったとのこと。見ていて幸せな気持ちになったそうです。

「どんな生き物も認めあって共存して生きていけると良いですよね。そんな世の中になって、地球温暖化を防いで、地球を守っていきたいと感じたので、私もクジラとシロクマを描いてしまうのだと思います。」そう小夜さんは言っていました。地球温暖化で生きる環境を失っているシロクマたちに想いを馳せながら描いているそうです。


【近くの店で、小夜さんの想いの詰まったマグカップを見つけ、購入してしまった私。堀水小夜さんの作品はこちらのサイトでご覧いただけます。https://hollymuse.thebase.in

さて、特別にこのブログを読んでくださっているみなさんに、2つの見方をお教えしますね。

まずは、城内坂の歩道から、dAgoraをご覧ください。大きな窓がまるで水槽のように見えます。スイスイと楽しそうに泳ぐ魚たち。水族館に来ているかのような気分を味わえます♪ それから、そのまま目線を空へと移してみてください。天気にもよりますが、晴れている日には、青空を気持ちよさそうに泳ぐ魚たちを眺めることができます。魚たちは、心なしか、解放されて自由を満喫しているような…。

そんな2パターンの楽しみ方。ぜひ試していただきたいと思います!

 

山水の店みなかわの方は・・・

山水の店みなかわの窓の方のテーマは『益子の夏』。今年、中止が決定した夏祭りの様子を表現しているそうです。矢津田好美さん、木村文子さんのサポートで下書きした、神輿を担ぐイラストの周りに、夏祭りに関する絵をみんなで描いていきます。みなかわにちなんで、素敵な土瓶も描かれました。

【楽しい楽しい夏祭り。来年は実施できるといいですね。】


【透明な窓に描くので、中と外と両側から同時に描けます。】

『山水の店みなかわ』。こちらは、知られざる、益子の陶芸の歴史がぎゅっと詰まったスポットです。私は、今回ウィンドウアートをきっかけに初めて店内にお邪魔し、店主の皆川要(みなかわかなめ)さんにお話を伺うことができました。


【山水土瓶を紹介してくれた皆川要さん】

店内に入ると、壁一面にたくさんの写真が飾られています。中には、表彰状も。いったい誰に関するものなのでしょう。聞いてみると、要さんの奥さんのお祖母様、皆川マスさんのものでした。マスさんは、世界的に有名な山水土瓶の絵付け師です。山水というからには、みなさんが思い描くような筆でシュッシュッと描く山水画を益子焼の土瓶や花瓶に描いていたわけです。当時は、現代の、成形から絵付け、釉薬、焼き等をほぼ一人で行うような陶芸制作方法とは違い、細かく担当ごとに分かれて制作されていました。マスさんはその中でも、『絵付け』の仕事を専門にされていたそうです。その技術が高く評価され表彰もされています。

さらに、マスさんは、今年「益子×セントアイヴス100年祭」で話題のイギリス人陶芸家、バーナード・リーチとも交流があったようです。リーチがマスさんに贈ったというイラストもこちらで見ることができます。(なんと、この店で描いたとのこと!)


【土瓶の中に帆船が。土瓶は版画で描かれているそう。おしゃれ。】

要さんにウィンドウアートについて感想をお聞きすると、「いいんじゃない。」と好感触でした。さまざまな世代がワークショップやその後の展示をきっかけに、山水の店みなかわに足を運ぶことになるでしょう。ウィンドウアートももちろんですが、店内の様子も覗いてみてください。窓に描かれた土瓶の実物を見ることができますよ。

 

ウィンドウアートの可能性

小夜さんがウィンドウアートを行うのは、これが3回目だそうです。ウィンドウアートという表現方法に対する感触を尋ねました。

「(キットパスで)混色するとすごく綺麗。発色もいい。楽しい。1人の世界じゃないじゃない?みんなで付け足していって1つの作品になるってすごく面白い。想像を超えていく。決まりもない。あぁ、私、これやりたかったんだなぁって感じてます。」

小夜さんのウィンドウアートへのワクワク感が伝わってきました。今後は、色んな人とコラボもしてみたいそう。知らない人とも関わり合える機会にもなりそう!とも話してれました。

ウィンドウアートのワークショップは「絵を描く」ということを通して、初めて会う人が、気楽にそしていつの間にか繋がることのできる、とても良い取り組みであると感じます。今回は、土祭の住民参加の広報プロジェクトの1つではありますが、今後も、一過性のものではなく、表現活動の場・観光資源の1つ・地域の憩いの場等々、さまざまに展開できるのではないかと思いました。


【完成後、みんなでパチリ。暑い中頑張ったね!】

 

(土祭2021レポーター 橋口奈津子 写真・橋口奈津子・簑田理香)

 

 

 

関連情報

ページの上部へ戻る