参加レポート|風景社セッション第4回

2021年10月2日(土)、台風一過秋晴れの日、風景者セッション2021「その先の風景を語ろう第4回目」が開催されました。
今回の講師は蔡奕屏(ツァイ・イーピン)さんです。

蔡奕屏さんとは…

蔡さんは台北出身、千葉大学デザイン文化計画研究室に所属される台湾のウェブメディアのライター・記者です。
日本には3年間滞在されており、日本語もとてもお上手な方です。
蔡さんと益子のご縁は、2015年の土祭。土祭に関心を持って、益子を訪れ、台湾の人向けの紹介記事をウェブメディアに書いてくださっていたそうです。

著書「地方設計」(ローカルデザイン)とは…

蔡さんは益子を訪れた後、渋谷ヒカリエで行われていたd&departmentの展示会にインスピレーションを受けます。「地方のデザイナーさんたちはどうやってデザインの目を持っているんだろう」という思いを胸に、2019年春から2020年夏にかけて、日本国内の様々な地方、総距離6000 kmを取材されました。
それでは第1部の蔡さんのお話からいくつか要点をご紹介します。

蔡さんの考える「ローカルデザインの公約数」としては、

・地域に根付くデザイン、
・クライアントがないデザイン(その案件にとどまらずイベントやまちづくりなどもする)
・広義的なデザイン、
・多様な役割とグループ(他の団体にも参加するデザイナー)、
・わざわざらしさを追求しないデザイン、
・豊富なコミュニケーションツール(コミュニケーションできる場があればデザインの哲学を表現できる)

ということだそうです。

「地方設計」は2021年1月5日出版され、わずか2週間で重版が決まりました。蔡さんは「台湾の読者は元々日本のデザインに興味があるが、日本のローカルにも興味を持っている」と考えています。

今回会場では「地方設計」の紹介動画を皆で視聴しました。(YouTubeで見つけましたのでこちらにも載せます!)

https://t.co/CsSdvBgSLk
(YouTube URL)

台湾の地方創生とは

台湾の人口減少、都市部への人口集中は日本以上と言われています。台湾政府は「地方創生」のビジョンを掲げ、その中で「社会参画」として「青年ワークステーション」、日本の「地域おこし協力隊」のような取り組みがあります。
「青年ワークステーション」は起業を前提とし、年齢は20歳から45歳まで、1チーム6人構成で2年間の取り組みになります。また「台湾設計研究院」という国の機関や「 T 22」プロジェクトといはう地域産業の復興への取り組みなどもあります。

目標は、創造的な関係を作るつなぎ手に…

著書「地方設計」は日本・台湾だけでなく、マレーシア・香港でも反響があるそうです。日本の課題はアジアの国々でも同様に模索している課題であり、国境を越えてローカルとローカルがつながる時代になるのでは、と蔡さんは考えます。
台湾の「地味手帳」という雑誌(日本の雑誌「ソトコト」のような)の中で、「勝手に姉妹郷(しまいごう)」という新しいプロジェクトも始めています。

日本のローカルと台湾のローカルのマッチングを目指し、オンラインミーティングの中でチームの紹介、地方の紹介、課題や試みを共有し、「国際的な関係人口作り」を目指しています。

周りや世の中に合わせるのではなく「自分がどうありたいか」…

第2部のトークセッションではコメンテーターとして民芸店ましこの中山久美さん、風景社の須田将仁さんと蔡さん、ホストの簑田理香さんでお話が盛り上がりました。

・益子は東京からも近く、来る人を温かく迎える風土がある。それは濱田庄司さんの築いた文化から由来していると考えられ、町の人もそれを大事にしている。
・日常の益子に町の外から来た人が感じるものがある。
・自分のやりたいことをやり、納得できる生き方をしている人も多い。

このような意見があり会場全体が頷いて聞いていました。

「地方設計」14組のデザイナーに共通するターニングポイントとは…

蔡さんが取材したデザイナーたちのI・Uターンには、共通するターニングポイント3つがありました。
それは
①バブルの崩壊(1991年)
②リーマンショック(2008年)
③東日本大震災(2011年)
です。

そして4つ目のターニングポイントとして、このコロナ禍になるのではと考えています。
コロナ禍だからこそ、オンラインが進み、国境関係なく繋がることもできる。うまくできないことがあっても、これからの可能性を広げるチャンスになることがある、と蔡さんは考えられています。

蔡さんの言葉に会場にいたみんなが「とても前向き!」「うん、うん、きっとうまくいきそう!」と笑顔になりました。

最後に会場のみんなで合言葉として、蔡さんのプロジェクト「 勝手に姉妹郷(しまいごう)」に合わせて、「しまいゴー!」で腕を上げて記念撮影し、トークセッションを終了しました。

トークセッション終了後は直接蔡さんとお話したくて、みんなでおしゃべりタイム、記念写真タイムとなりました!
蔡さんの人柄と前向きさ、これからの展望にみんなで元気をもらえる時間となりました!

(土祭2021レポーター 藁谷はる)

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