人々の「根」の強さと豊かさと。

益子の作家たちとも関わりが深い坂口修一郎さん(ミュージシャン/プロデューサー)から、自身が手がけるイベント「GOOD NEIGHBORS JAMBOREE」の準備の合間をぬってメッセージを寄せていただきました。 
                         写真/Tapioca Tunnel 昨年のGNJでのひとこま

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ずっと音楽の畑を歩いてきた僕がクラフト郷益子にはじめて足を踏み入れたのは、
自分の故郷鹿児島でグッドネイバーズ・ジャンボリーという、音楽とものづくりをテーマにした
イベントを主宰しはじめた頃でした。

もともと形に残らない音楽や場を作ることばかりの僕としては、
日常の生活に使える美しいものを創りだす人たちにはうらやましさと憧れがありました。
そんないちファンとして陶器市に足を運んでいただけだった僕にとって、
益子という町への関わりが大きく変わったのは、 大震災の後さまざまな出会いがきっかけとなって
東京での「KASAMA∞MASHIKO」展の立ち上げを プロデューサーとしてお手伝いすることになってからでした。
この展覧会の為に何度も何度も益子と隣町の笠間に足を運んでは
この地に暮らすクラフツマンの方々を紹介してもらい工房を訪ねて回りました。
ろくに陶芸の歴史も知らない門外漢として関わる以上、
とにかくまずは彼らの暮らしを 体感するところからと思ったからです。

そこで感じたのは、なによりも大地の土や木から手仕事で物を作り出す彼らの力強さでした。
土と火から物を作り出す根源的な力強さは、空気の振動の組み合わせだけで作品を作る音楽家の繊細さとは
全く違っていて、文字通り大地に足のついた「根の強さ」を感じました。
そしてこの足腰のしっかりした人々が主義主張を超えて集まった時の力の大きさは
僕の予想など遙かに超えたもので、その逞しさに教えられものづくりについて
さらに目を開かせられることとなったのでした。

展覧会の準備は今にして思えばほんの数ヶ月のことでしたが、 そこでの交流を経て
益子は僕にとって勝手に懐かしい親類の住む町のような感覚になっていきました。
それは移住者が多くよそからの人間を受け入れる町の特質でもあるでしょう。
益子の自然が持つ日本人の原風景のような景色がそう感じさせるのかもしれません。
人が立つ大地の土を掬い上げ暮らしの中に溶けこませる力と技を持った人々と、
彼らを育む益子の景色は器としての形となって僕の生活の一部となり、
益子の景色は毎日のテーブルの上に並んでいます。
そして益子の山々を東京にいても鹿児島にいても懐かしい故郷のようにいつも思い出します。
外から来た人々を受け入れ支える益子という町の豊かさと根源の強さを
土のお祭りとして発信することは、自らの足元から発想する感覚としてとても共感を覚えます。
他に類のないこの祭典が未来に向け発展していくことを、
同じくものづくりにとりつかれた人間のひとりとして願っています。

Double Famous/GOOD NEIGHBORS JAMBOREE 坂口修一郎

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

GOOD NEIGHBORS JAMBOREE 8月26日鹿児島県南九州市かわなべ森の学校で開催 
フイナム 坂口さんと、土祭セミナーで講演していただく中原慎一郎さんの対談

さかぐちしゅういちろう Double Famous/GOOD NEIGHBORS JAMBOREE
1971年鹿児島生まれ。プロデューサー/ミュージシャン。90年代より無国籍楽団ダブルフェイマスのオリジナルメンバーとして、フジロックを始めとする各地の野外音楽フェスに多数参加するなど活動を続ける。
2004年にプロデューサーとして代官山UNITを立ち上げた後、現在ではジャンルを越境したイベントのプロデュースに多数携わっている。最近では東日本大震災支援で緊急来日したジェーン・バーキン・バンドをコーディネートし、その後ワールドツアーに同行。 2010年からは自身の故郷である鹿児島で体験型の野外イベントGOOD NEIGHBORS JAMBOREEを主催。

ページの上部へ戻る