Neharuが紡ぐ古墳群のサイドストーリー

田舎で最高に格好よく生きる3人

10月初旬。

生姜や落花生の収穫で大忙しの中、Neharuの彩香さんが取材に応じてくれた。

最近「畑保育園」の一員になった娘さんの面倒も見ながら、こちらの質問に丁寧に答えてくれた。

 

Neharuは、農を生活の中心におき、季節を生業とし、季節毎に収穫した農作物の販売・加工を行う、大人2人と子ども1人の家族ユニット。自然栽培を基本とし、身体に優しい野菜やお米を生産している。更に詳しいエピソードは、ヒジサイノートNo.4をご覧ください。

10月31日(日)、七井地区菜の花プロジェクトの集大成として、Neharuの商品「メイドイン小宅古墳 菜種油 ましこのひとしずく」が、小宅古墳群にて販売予定だ。数量限定商品で、今回の販売数は23本ほど。今年の春、小宅古墳群を鮮やかに彩った菜の花から取れた種を元にしてできた、大変貴重な菜種油である。

この「ましこのひとしずく」ができるまでの流れと、込められたNeharuの思いをお聞きした。

 

Neharuは、元々益子町の地域おこし協力隊として活動していた経歴を持つお二人が始めたユニットだ。活動当時からの人や地域との繋がりを大切にしているほか、益子という土地の歴史的な成り立ちに対する見聞も深い。

「実は土祭に関わるようになったのも、人との繋がり。旦那さんである佑一さんを中心に、小宅古墳群里山の会の活動に継続的に参加しており、そこからどんどん繋がっていき、(Neharuに)声がかかるようになったんです。」

 

Neharuには、いい意味で

『欲がない』と感じた。

正確には、旦那さんの佑一さんの話は聞いていないので、『きっと欲がないだろう』の方があっているかもしれない。

 

欲はないだろうけれど、発信はしている。
道の駅で、加工品を売っている。自分たちらしさを全面に押し出した商品を売っている。つまり、オリジナリティの塊であり、商品の分野も珍しいし、デザインや見た目にもこだわっている。
SNSで情報発信もしている。通販もしている。(通販に関しては、今はそんなに積極的に行っていないようです。)

その先にあるのは、「利益」ではなさそうだ。もっと事業を拡大したい、という思いもどうやらなさそう。

「その時にやるべきことを、できるだけやっているだけ」

そう言うのだ。

なんだか、めちゃくちゃ格好いいと思った。

現代っぽいと思った。きっと東京の表参道と同じくらい最先端を走っているはず。

短期的な数値目標とか、なんとなくの展望とかないのか…とすぐ考えてしまう私にとっては、目から鱗なのでした。未知との遭遇なのでした。本当に、新しい考え・視点に出合わせてくれて、土祭に感謝です。

 

そうしてできあがったのが、「ましこのひとしずく」。

人との繋がりを大切に。
季節を感じて世話をして。
できることを丁寧に。
ただそれだけ。

ね、格好いいでしょう。

菜種油ができるまで

「収穫がものすごく大変。人の手がないとできない作業です。けどそれだけ達成感があります。」

そう彩香さんが言う、菜種油作り。工程は次の通り。

①種を植える。時期はなんと9月!霜が降りる時期を越すと丈夫な菜の花が咲く。
②3月〜4月ごろ花が咲く。
③5月には花は枯れる。そのまま放っておく。
④6月梅雨に入る前に刈り取る。
⑤実から種を出す。これが非常に骨が折れる作業。
⑥採った種を圧搾し、油を丁寧に抽出する。
⑦時間をかけ何度もろ過を繰り返し不純物を取り除く 
⑧瓶詰して完成!

⑤の刈り取ってから種を集めるまでは、トラクターで踏んだり、殻と種を人の手で分別したり、その後更に種だけにするためにふるいにかけたりと手間がかかる。


収穫の時期も難しい。種ができているかどうか、よく目を配って確かめてから収穫。


里山の会の床井さんお手製の『ふるい』。


菜の花の種。ものすごく小さい。

ようやく完成。1滴1滴何度も濾して抽出した’ひとしずく’がぎゅっと詰まっています。

 

里山の会 床井さんにも聞きました

今回、土祭の企画の一つとして「七井地区菜の花プロジェクト」があり、特別な様相を見せている菜種油企画(少なくとも、私は特別感を感じていました)。実際は、今年だけ特別に何かをしているわけではない。毎年菜の花は咲いているし、菜の花の種から菜種油を収穫し、商品化して売られている。

古墳群を愛し、誰よりも整備に尽力されているといっても過言ではない、里山の会代表の床井さんに、思うところと今後の展望を聞いた。

「古くから人々の営みがあった古墳群を知ってもらうこと、来てもらうこと。そういう人が増えることはいいことであるし、そういった方向性で活動しています。」

「上質な菜種油を作ることができる『キラリボシ』という菜の花の品種を植えたことは事実。ですが、菜の花の生産量を増やしたい、菜種油をもっと売りたい、そこから話題性をもっと広げたいという思いはないわけではないが、強くはないです。あくまでも、小宅古墳群の魅力や価値の1つ。町の子どもたちの学習材料でもあるし、ありのままの状態を残しているランドスケープ的なところもある。(昔は雑草や竹だらけで鬱蒼としていたところだったが、そこに手をかけて)整備された景色を気に入ってほしい。この間は結婚式を行ったカップルもいて、若い人にもそういった価値が伝わっていっていると感じます。」

 

今後の展望は。

「今の状態をキープしていきたいですね。そのためには協力してくれる人が必要だし、良さを知り、手伝いたいと思う人が増えると嬉しい。自分が元気なうちは、できることを行い、キープしていくつもりです。」

10月31日。午後3時。小宅古墳群に’おやけこふんこうえん’出現

Neharuの「ましこのひとしずく」販売ブース、Neharuプロデュースの、小さい子が思いきり遊べるようなもみ殻山や軽トラ滑り台等のキッズコーナー(楽しそう♪)も古墳群に設置される予定です。更に、縄文太鼓の演奏が舞台で予定されています。

人と人が繋がり、時間をかけて、丁寧に作りあげた

景色、
商品、
雰囲気、
目の輝き、
リズム、
アイデア、

そのほかにも目には見えないものたくさん。

積み上げていった、紡ぎ続けていったものを覗きにいらしてください。
機械で効率的に利益を追い求める方法では見えない景色がそこにはあるはず。

小宅古墳群へのアクセスはこちらを参考に。
http://hijisai.jp/program/a-03-1/

(2021土祭レポーター 橋口奈津子 写真・Neharu仁平彩香(菜種油ができるまでの部分) 橋口奈津子)

 

 

 

 

 

 

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