里山の自然、牧場プロジェクト

今秋、益子に新たな牧場がオープン

那須町の森林ノ牧場さんが、新たな牧場を益子町でオープンする予定です。
舞台となるのは、なんと益子町大平の森林の中にある放棄地!

耕作放棄地とは、もとは農地だったものの、過去1年間栽培がされず、今後数年間も栽培される考えのない土地のことを言います。
益子町では、農地面積の約6.3%が耕作放棄地となっているそうですが、今後は微増する可能性があるとされ、特に中山間地域における耕作放棄地が問題となっているそうです。
みなさん知っていましたか?

森林ノ牧場さんは管理した森林で牛を放牧することで、乳製品生産と森林管理を同時に行う牧場です。
牛を放牧することで放棄されている森林を管理できる一方、もともとの生態系が変わることが考えられます。

乳製品を作ることと同時に、「色んな生き物が集まる牧場にしよう」という指標を持って自然と牛と人とのバランスを試行錯誤しながら牧場を運営されています。

Let’s生き物調査ワークショップ

今回は、牛が放牧される前の牧場で、生き物調査ワークショップを行いました!
5月から定期的に行われていた“里山の自然、牧場プロジェクト”も、今回で最終回です。
どんな生き物が見つかるでしょうか?

晴天の秋晴れのもと、23人の参加者が集いました。
主な参加者は親子連れで、中にはリピーターの方もいらっしゃいました。
「1回来たら草や木を触ることにハマってしまって、今では家の庭の枝も全部遊び道具になってしまうんです」
と、男の子のお母さんは笑いながら教えてくれました。
思いっきり自然で遊ぶ感覚、楽しいですよね。

頻繁に見かける生き物の写真を見ながら、事前学習をします。
先生は森林ノ牧場の生き物博士、野田航平さん。
小さいころから生き物が大好きで、那須町でも定期的に生き物調査ワークショップを行っているそうです。
那須町と益子町、生態系にどのような違いがあるのでしょうか?

今回のメインは虫なので、手作りの“牛乳パック虫かご”と,“ビーティングネット”(簡易的な虫網のようなもの)を持って調査に行きます!

早速大きなイナゴが見つかりました。
「ちょっと怖いけど、手袋があれば大丈夫!」
と、男の子。

生き物の種類は、”いきものコレクションアプリ「バイオーム」”を用いて特定していきます。撮った画像を瞬時にAIが認識して同定してくれる優れものです。

慣れてくると、最初は怖くて捕まえられなかったカエルにも、果敢に挑戦できるようになりました!

 

森林=豊か?

今回の調査では、特別珍しい生き物を見つけることはできませんでした。
前日に行った土壌中の生き物調査の結果でも、生態系の豊かさレベルが「道路の植え込みレベル」だったそうです。

長い間人の手が入らず、耕作放棄されていた土地は草がぎっしりと生えているものの、見かけほど生態系が豊かではない可能性があることがわかりました。
野田さん曰く、一度開拓された森林は、同じような植物が生えやすいそうです。
よって、集まってくる生き物の種類も少なくなっていることが考えられます。

牛のいる牧場には、フンを餌とするコガネムシの仲間やハエたちが集まってきます。
それを狙うキビタキやシジュウカラのような小鳥たちがやってきます。
虫たちによって空洞ができたフンに微生物が住み着き、分解されて豊かな土となります。そして、また草が育って牛のエサに変わります。
牛がいるからこその生態系のサイクルが、牧場に生まれていくのです。

みなさんは牧場にする前と、した後、生態系がどう変わると予想しますか?

森林ノ牧場さんはオープンしてからも、定期的に生き物調査を行うそうです。
答えが気になる方は、是非参加してみてはいかがでしょうか?

(土祭2021レポーター 金敷奈穂)

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