参加レポ|地域論プロジェクト「益子研究」公開研究会

10月31日、地域コミュニティ・ヒジノワ(ヒジノワcafe&space)にて、日本国際理解教育学会地域論プロジェクト公開研究会が行われました。

また、今回の研究会は土祭の公式YouTubeで公開されております!
以下のリンクからご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=bCOh1bZy4kA&t=1014s

実は開催地のヒジノワは、もともとは、2009年に開催された第1回の土祭で、展示会場とするために官民協働で改修された空き家だった場所。それから10年以上にわたり、町民の有志がボランティアで運営を続けてきているヒジノワ。
そんな地域コミュニティの起点となったヒジノワで、地域の在り方について考えてゆきます。

 

地域論プロジェクトとは?

地域論プロジェクトは、
『持続可能な開発を、地域での生活・文化の視点から捉え直し、その生活・文化づくりに求められる学びや教育のありようを描き出すこと』
を、目標としているそうです。
つまり、生活の中で発展してきた「風土」「祭り」「産業(農業・窯業)」「生活」などの“文化”を読み解き、持続可能性につながる“文化”と“学び”の在り方を探ってゆく活動です。

…地域の成り立ちには意味や理由があり、それらを考察することが、これからのまちづくりのヒントになるという逆説的な考え。
それぞれの地域に即したまちづくりを行う上で本質的な考え方だと思います!
地域論プロジェクトの益子研究では、土祭とヒジノワを研究対象としています。
どんな話が展開されるのでしょうか?

 

3人の研究者からみる、益子。

はじめに、協働研究者である簑田理香さんの進行のもと、東京大学空間情報科学研究センターの廣瀬俊介さん、早稲田大学の山西優二さん、東日本国際大学の南雲勇多さんがそれぞれ中間報告をしてくださいました。

最初に発表を行ってくださったのは、廣瀬さん。
廣瀬さんは「風土の持続と農業の継承の関係」を研究されています。
データから現在の低・未利用の農地の現状を読み解き、新規農業者などに聞き取り調査を行った結果を報告してくださいました。
また、益子で新規で農業を始めようとしている髙山源樹さんも、農業を始めるうえでの経験談をお話してくださいました。

次は、「人間と自然との関わり」を研究されている山西さん。
土祭やヒジノワを切り口に、益子での学びをお話してくださいました。
益子では、自然を受け入れつつ、また自然に働きかけることで、新たなものが作りだされるという、人間と自然の関わりの2側面の交錯が素直な形で表現されていると感じているそうです。

最後に、南雲さんです。
南雲さんは「コミュニティと日常・非日常を視点とし、地域における学びの循環」に焦点をあてて研究されています。
ヒジノワと土祭を軸とした益子地域を対象とし、今後の教育のあり様についてお話してくださいました。

農学部に所属しており、農業を取り巻く問題について学んできた私にとっては、
廣瀬さんの発表での
「『農地の貸し手と借り手、売り手と買い手が結び付けられる機会が少ない』ものの、それらの問題を解消しようとする動きが見られることがわかった」
というお話が印象に残りました。
地域にも新しい動きが起こり始めているようです。
里山の風景には、必ずある“農業”。
そんな農業に存続の危機があることは知っていましたが、益子町でなんとかしようと動き始めている人がいる、そしてそれが繋がり始めているという報告を、私は“ポジティヴさ”と“もどかしさ”を抱きながら聞いていました。

地域ごとに土地・ひと・農業の形態は違います。
国での一括の政策だけではなく、地域ごとの政策を、地域に関わる方々が自ら行っていくことが必要だと思いました。

 

参加者の方々とのトークセッション

中間報告のあとは、ヒジノワ共同代表の大塚康宏さん、鈴木稔さんを交えたトークセッションに続きます。
大塚さんは、
「益子町、ヒジノワには『やさしさ』と『多様性』があると思う。これからもヒジノワでのコミュニティを続けていきたい」

鈴木さんは、
「益子の昔ながらの自然や街並みを残していきたいし、多様なひとが繋がることができるヒジノワが誇り」
と、話してくださいました。

参加者からは、
「ヒジノワのようなコミュニティもまだない地域で、どのように場づくりをしていけばよいか?」
「益子での農業のあり方とは?」
などの質問がされ、とても盛り上がりました!
詳しいセッションの内容は、是非冒頭の動画をご覧ください。

 

さいごに

たくさんの方々が研究に取り組まれており、“学術的にも魅力があるまち”なのだと感じました。
益子での研究事例をそのまま適応することはできないかもしれませんが、問題解決に繋がるプロセスフローを考えることは、どんな地域にとっても有益なことだと思います。

地域論プロジェクト...一見難しそうなテーマですが、今後の開発を考える上ではとても大切な思考だと感じました。
普段なんとなく生活している“地域”にもそれぞれの成り立ちがあり、いまの姿があります。
これを機に、地域の成り立ちから今後のあり方を考えてみませんか?

 

(土祭2021レポーター 金敷奈穂)

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