レポーターコラム:祭りの後

土祭が終わり、益子には「日常」が帰ってきています。

楽しさやワクワク感を生んでくれたウィンドウアートがあった窓は、外の様子を写すだけ。

カラフルなドアが消失した神社の参道は、再び本殿がまっすぐ見通せるようになりました。

ランドスケープのプログラムで歩いた各地区を訪ねてみると、
前沢山から見える里の景色はすっかり秋らしくなり、

ましこ世間遺産「黒石の巨石群」はコナラの黄葉に包まれていました。

ただ、すべてが元に戻ったわけではありません。
のぼり竿の材料を集めた竹林は、みんなで手入れする前の雑然とした様子に戻ることはなく、すっきりと開けた景色が広がっていました。

益子町のブランドコンセプト(https://mashiko.town/)は「未知の日常」です。
そこでは益子町を「住む人はあらためて気づき、訪れる人もこれから出会う『未知の日常』が広が」る場所と捉えています。
自分がレポートしたそれぞれの場所を再訪してみたことでも、
そこにあったものが無くなることで意識できたこと、
そこに行く機会があったから見つけられたこと、
関わったことで気になるようになったこと、
などなど、「未知の日常」に出会えたような気がしました。
また、そうした気づきと同時に、この気づきを一時の事で終わらせないことが大切とも感じました。

益子に広がる風景やここでの暮らしぶりは、何気ない日常が積み重ねられて形作られてきたものです。それは意識してなされているものではありませんが、だからこそいつの間にか失われてしまうものであり、だからこそ大事に引き継いでいきたいものだと思うのです。

ここにはまだまだたくさん「未知の日常」があることでしょう。それに気づかぬまま徒に外を羨むばかりではなく、足元にある未だ知りえぬ日常に気づく感性をわすれないように、祭りの後の日常から、そんなことを伝えられた気がしました。

 

(土祭2021レポーター 鈴木利典)

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