- この土地で生きる
- 風土・風景を読み解く
- 2015年6月30日
[11]下大羽地区 風土・風景を読み解くつどい 5/9
5月9日に下大羽コミュニティセンターにて開催した、益子町東部に位置する下大羽地区の「風土・風景を読み解くつどい」。
他の地区に比べて小規模でありながら、独自の行事を数多く実施し、町長にも「団結力が強い」と評されるこの地区の「つどい」には、事務局の予想を大きく上回る60名以上の参加者が集まりました。
その団結力を支える一端を担っているのが、地区内の組ごとに継承されている様々な集まり。
西の根組で今も続けられているのは、女性たちが集まって念仏を唱えるイチマンドウ。
[下大羽地区スライドNo.40]
イチマンドウの念仏は、聞き取りに伺った際に実演してくださった藤田節子さんにより、「つどい」の場でも披露され、参加者が皆で聞き入る一幕もありました。
「イチマンドウだけはここで、おばちゃんたちに来てもらった方がお互いに、一年に一回おばちゃんたちがしわしわの顔でもイチマンドウのお念仏やると生き生きするんですわ、一緒にお話しする機会もないし、いいんじゃないかな、と思って。」
そう藤田さんが語ってくれた念仏堂は、昨年秋に西の根だけで寄付を募って台風による傷みを補修したそうです。
その念仏堂があるのは、高台にある西の根の通りから大羽川沿いの低地に下る途中。
「昔の人は浄土みたいに感じたのかな」という言葉も、現地で聞くと自然に肯けるものでした。
昔から受け継がれてきたもののほかにも、地区を歩くとあちらこちらに「気持ちのよい」場所が。
5年くらい前に髙山英樹さんが登って「宇都宮まできれいに見えた」という富士山(ふじやま)。
廣瀬先生の一行が登ってみたところ、残念ながら山頂からの眺望はシノに阻まれていましたが、下山中には気持ちよく歩ける水辺の草原に遭遇。
このような場所の環境整備を行うことで、地域の方々、そして来訪者も楽しめる可能性が秘められているように感じられます。
今も昔も、この地区は多くの旅人たちを迎えてきました。
それを物語るのは、この地区から峠を越えて茂木町に入り、茨城県の笠間へと向かう「笠間街道」沿いに、かつて峠越えの行者が喉を潤した水飲み場がある、という言い伝え。
そのお話を小島喬さんに伺い、場所を探したもののなかなか見つからず、やっとの思いで茂みの奥にアサザが生育する湧水を発見。
言い伝えの場所の特定には至りませんでしたが、歩いて峠を越えた昔の旅人ほどではないにせよ、湧水のありがたみを感じることができました。
交通手段こそ自動車に代わっても、今も宇都宮と水戸の両県庁所在地を最短距離で結ぶルートの一部として利用されている「笠間街道」。
笠間から先には、太平洋へと向かう道が続きます。
かつて行われていた子どもたちの「海辺への一泊旅行」の意義を、廣瀬先生は南方熊楠による「比較の学」を引き合いに出して語りました。
「ある土地だけを見ていても、その土地のことはわかりにくいもの」。
土祭が益子の方々にとって、町内の他地域や町外のことを識る機会となり、それによって自分の暮らす土地をよりよく理解することに繋がれば。
そして、町外から土祭にお越しの方々にとっても、益子という土地を見ていただくことで、それぞれの暮らす土地をよりよく理解することに繋がれば。
そんな思いで準備を進めている企画の数々に、どうぞご期待ください!
(土祭事務局 今井)