10年くらい前になりますが、民芸店の方から一冊の古いアルバムを譲り受けました。
昭和30年頃の陶郷益子を撮ったもので、
「益子焼を尋ねて」という手書きのタイトルが入っていました。
開いてみると、粘土を運ぶ人、轆轤をひく人、薪を運ぶ人、窯焚きをする人、絵付けをする人など、
当時の職人さんの働く様子がモノクロームで写されていました。
健やかで美しいその世界は、今では夢の桃源郷のようです。
一瞬のうちに、強く心を惹き付けられてしまいました。

その頃までの暮らしは、土地に根ざし、祖先とつながる、連綿と続く小さな循環の中にありました。
身体を使って働き、みんなで助け合う等身大の生活だから、
不安やストレスなどはあまり無かったのでしょう。
写真に写る人たちは静かですが、自信に満ちた表情をしています。
そこには、失われた日本人の精神やこれから向かうべき姿が映し出されているように感じました。
土祭の企画を始めた時に、すぐにこのアルバムが頭に浮かび、
その写真をビジュアル・イメージとして、ポスターやビルボードに使わせていただくことにしました。

震災や原発の事故の後、多くの人が、これからどうしたら良いのかという疑問を持ち、
迷いつつ、様々な想いをめぐらせているのではないでしょうか。
濱田庄司はかつて、激動の社会から暮らしの理想郷を求めて、ここ益子に辿り着きました。
そして、それまでに身につけてきた知識や技術を生かして、
この場所に寄り添い、器をつくり、日々の生活を楽しみました。
その仕事や哲学が、やがて世界へ影響を与えます。

幸い益子には、豊かな自然、農業や手仕事がいまも息づいています。
まだまだやり直すことは可能です。
土祭は、この土地の歴史や自然に感謝し、これからの平和な世界を祈る祭り。
みなさんとともにもう一度、これからの理想郷を目指す、
この二週間がその手がかりになれば、と思っています。

土祭総合プロデューサー 馬場浩史

ばば・こうし
STARNET主宰。1958年埼玉生まれ。1980~90年TOKIO KUMAGAIブランドをプロデュース。
インテリアやファッションなどのプランニングに従事した後、1998年益子町にオーガニックレストラン+ギャラリー、
STARNETをオープン。自然や風土と調和した身体と精神に心地よい暮らしのために、衣服、食べ物、クラフト、音楽など
あらゆる分野に渡ってプロデュース、ものづくりを展開。2009年の第1回土祭以来、土祭総合プロデューサーを務める。

ページの上部へ戻る