ウィンドウアート・レポ|アートは感じるものなのか、理解するものなのか

加藤靖子さんが、ましこラボの建物の窓ガラスに下絵を描いている。下絵なので、白いキットパスで。すいーすいーと。

栃木県にも、緊急事態宣言が出され、8月に行うはずだったこのプロジェクトが9月に延期。さらに、ワークショップ型のイベントも中止。

やるせない気持ちになる時もある。受け入れていかなくてはならない。

 

アートの見方

私は、普段から、頻繁に美術館に行って絵画を見たり、陶芸作品を眺めたり、そんな日常を送っていない。(全く芸術に触れていない生活を送っているわけではないけれど。)さらに、芸術家の友達もいない。だから、アートの見方はよくわからない。
今回の土祭で、土祭レポーターとして、制作現場にお邪魔させてもらう機会を何回かいただいた。
どうしても、「この絵のテーマは?意図は?思いは?」と聞いてしまう。これから見に来る人たちが、知りたい裏話なんか聞けたらいいのかなと思い、聞いてしまう。

加藤さんと話してみて、そういう堅苦しいのいらないのかな?と思った。

そもそも芸術家の人たちがみんな確固たる信念を掲げて、それを毎回表現しているわけではないのだ。溢れる思いを表現している人ももちろんいる。それが良いとか悪いとかではない。

描きたいから描いてる人もいるということ。

加藤さんと話してみて、改めて気づいたことだ。

だから、どうしてこの模様にしたんだろう?とか作者の思いを汲み取りながら見るだけではなくて、

「あ、この模様綺麗。」

と浸ってみたり、自分の内面の記憶と結びつけたり、見るというより、『感じる』方が近いかもしれない。そうやって自分と向き合う見方もある。

見方は、それぞれ。見る人の自由なのだ。

私は、加藤さんの魚たちを見て、行ったこともないけれど、「この子達、スペインにいそう」と思った。原色で鮮やかで、あっけらかんとした表情で。お菓子のパッケージにもいいかも。誰か女性シンガーのCDジャケットに描かれてもいいなぁ(今時CDないか…)。妄想は膨らむ。

 

いつもは色鉛筆画を描いています

加藤さんは、普段は色鉛筆を使った絵を描いている。今回はキットパスを使って窓に描いているが、どちらでもカラフルになることが多いと言う。

「明るくなるけど、気持ち的には暗い絵を描いていることが多いです。その時その時の自分の気持ちは、現れると思います。以前(大学生の時に)日本画を描いているときは、くらーい色を使っていて。でも、今は、なんでだか自分ではわからないけれど明るくなるんです。(このことは)いいな、と思います。」

「題名が暗くても、絵が明るく仕上がるから、それで(自分が)救われているな、と思います。」

「暗い絵の方が自分は好きなような気がする。けれど、可愛いのも好きなので。」

 

益子は加藤さんにとって〈生きやすい町〉

カラフルな絵を描き続けているわけ。加藤さんご自身の、心境が現れているのかもしれない。益子で生まれ育った加藤さんが、大学進学と就職で、一度、町外に出た。

「自分が明るくなったのかな…益子に戻ってきてから。(加藤さんは、益子出身。)友達もいるし。子どもの頃は苦手な町だった。大人になって作家としてくると、作家さんがいっぱいいる町なので、こういう町は貴重だと思う。」

「すごく生きやすいです。へんてこでも、受け入れてくれる。」

なんだか、加藤さんの生の声を聞き、私も救われた気がした。そして、益子町のいろいろな人を受け入れる土壌がある文化・懐の深さを目の当たりにし、涙が出そうになった。余裕のない、現代の世の中で、いとも容易く、当たり前のように「あなたはあなたでいいんだよ」と言ってくれる。益子町は、そんな町なのだろうか。

 

こんなエピソードもお伝えしましたが、アートの見方は人それぞれです!きっと

初めて会う私に、たくさんさらけ出してくれた加藤さん。ありがとうございます。
私は、そんな背景を知って欲しいと思い記事にしましたが、何も考えず、見てみてほしい。

感じるもよし、理解しようと深掘りするのもよしだ。

 

ましこラボとは

最後に、今回のウィンドウアートの会場であるましこラボについて、お伝えします。

今年の3月にまちが設立した地域づくり法人です。皆さんに知られている事業では、WEB陶器市を運営しています。 また、土祭関連では、住民プロジェクトや土祭中に益子を楽しんでもらえるようなツアーの企画・ 運営という形で関わっています。益子町のふるさと納税の特設サイトの運営に向けても準備中で、益子町 の更なるPRの場となるようにしていきたいとのことです。

 

会場
ましこラボ
住所|益子町益子799-2

(土祭2021レポーター:橋口奈津子)

 

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