七つの神社を巡る|中﨑透さん(1)紹介コラム

10月15日からのメイン期間では、アーティストの屋外展示が始まります。
どんな考えや環境で創作活動を行い、土祭2021では
どんな世界を私たちに見せてくれるのでしょうか。
土祭2021の広報冊子『ヒジサイノート』に掲載中のアーティストへのインタビュー記事を、お一人ずつ、こちらでも順に紹介していきます。今後、住民レポーターさんたちによる制作風景のレポートの掲載も始まりますので、どうぞお楽しみにお待ちください。
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アートプログラム|七つの神社を巡る 益子地区 太平神社
中﨑透さん   土の可能性、アートの可能性
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ひたちなか市に「土祭」初参加となる中﨑さんを訪ねた。
大通りから少し入り組んだ道を入ったところにある敷地に、母屋と、かつては農機具などが置かれていたらしいと言う大きなプレハブの倉庫。数年前にこの物件を見つけて契約し、引っ越してきたばかりの中﨑さん。ロフトとなっている2階スペースも見せていただきながらお話を聞くうちに、アトリエと言うよりジャンル不詳のベンチャー集団の秘密基地のような、そんな空気感も感じてしまう。

考えることが止まらない

「益子はけっこう行っているんですよ。友人が薪窯を焚く時にたまに手伝いに行って薪をくべています。今はお休みになっているけど陶器市では遺跡広場に仲間が集まるから毎年楽しみにしていて。吉村和美さんや芳賀龍一くんや山野辺彩さんとか、益子が拠点の学生の頃からの友人たちがつくった器のコレクションもあって。あ、僕が作ったものもあります」

僕がつくった器?
見せていただいた高台を持つ碗は、端正な佇まい。聞けば中﨑さんは、大学で油彩を専攻しながら、演劇のサークルと、小さな薪窯を持つ陶芸サークルで活動していたとのこと。

学生時代から、絵画、インスタレーション、演劇、陶芸という、近いようで、それぞれ輪郭が際立つ表現の領域を自在に往来しながら楽しんできた中﨑さん。

美術家として、都内のギャラリーはもとより、北から南までさまざまな地方の芸術祭に招聘され、また、作家としてだけではなく、ディレクターやキュレーターとしての仕事も多い。

「普段は、人と関わりながらの制作や、参加型のプロジェクトも多いのですが、今はなかなか難しくて、どうしても展示メインになってしまいます」

震災後にスタートした「プロジェクトF U K U S H I M A!」では、全国から送られた布を繋いで巨大なパッチワーク風呂敷を作りフェスの会場に敷きつめる「大風呂敷プロジェクト」を中心に美術部門のディレクターを務めている。震災から10年が経過した今年、世界は、新型コロナウィルスのパンデミックのただなかにある。

「国の動き。移動の制限。ある種の分断。見えないものをどう捉えようとするのかが問われている。そして何より、それらが僕たちの生活に直接関わってくる。そんな中で、311のことを頭の中でフィードバックしたり、参考にすることもあります」

8月にはプロジェクトFUKUSHIMA関連の展覧会も準備中だという。それにしても、土祭以外にも、この秋に中崎さんが参加するアートイベントやプロジェクトはとても多い。

「美術家として仕事はし続けないと生きていけないので、ある種のスピード感は大事にしています。考えることが止まらないというのもあるし、引き出しも増えていますから、常に、自分の中で、これとこれを組み合わせたらどうか、とか、そんなマッチングをしている状態です」

土祭での展示は、どんな引き出しが開けられるのだろうか。

「ライトボックスの作品と、土でつくるものを並行してやってみようと思っています。せっかく益子なので、轆轤を挽いたり、土を掘ったりとか、タイルもやりたい、絵付けもしたい、みたいなかんじで、夢が広がりすぎて、時間も場所も足りなくなるかもしれません(笑)。7月後半と8月後半には、益子に滞在して、いろいろ試してみる予定でいます。」


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中﨑透さんプログラム紹介ページ
http://hijisai.jp/program/c-03-5/
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『ヒジサイノート 3号』より転載。
益子の未知の日常を探る巻頭記事なども掲載した土祭2021の広報冊子『ヒジサイノート』は
土祭オンラインサイトでも送料のみで購入できます。
https://hijisai.stores.jp
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取材・執筆・写真|簑田理香(風景社)

 

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