参加レポート|風景社セッション2021

棍棒(こんぼう)が世界を救う!?

先日11月13日(土)に行われた風景社セッション2021「その先の、風景を語ろう」第5回が、益子町にあるヒジノワにて、開催されました。

「二百年の里山、十全に生きるために」とのタイトル。
「十全」とは、少しも欠けたところがなく、全て完全なこと、だそうです。
実は初めてこの言葉を知りました。
そんなタイトルで今回お話しくださるのは、農耕者の東千茅(あずまちがや)さん。奈良県から遙々益子町へお越しくださいました。

詳しくはこちらをご覧ください。
http://hijisai.jp/program/k-04-5/

勝手に女性をイメージしていましたが、丸坊主の男性でした。名前で推測してしまうのは、本当に良くないと反省しています。

会場のスクリーンに映し出されているのは、シュレーゲルアオガエルさん。
まずお話しくださったのは、こちらのアオガエルについて。
生き物の話から、里山、そして山の話へと広がっていきます。

こちらのスクリーンの絵は、東さんの里山のイメージ。里山の一部を食べて貪欲に生きるわたしたち生物は、里山の胃袋の中にいる
と仰っていて、なるほど、確かに私たちは里山を喰いつつ、実は抵抗し続けていないと、自然に飲み込まれる、小さな生き物でしかないんだな。
そんなことに気づかされました。

今回のホストは風景社より廣瀬俊介さん(環境デザイナー)と、こちらの写真の女性、伊藤奈菜さん(bio-landscape主宰)をコメンテーターに迎えてのトークセッションでした。
伊藤さんは現在、益子町と千葉県の二重生活をされながら、お仕事をされているそうです。

東さんのユーモア溢れるトークに伊藤さんの真面目な切り返しが印象的でした。

今回のお話はなんと言っても「棍棒(こんぼう)」が主役?といっても過言ではないほど、現在の東さんのライフワークに欠かせない棍棒制作。
最初はちょっと何を仰っているのか分からず、目が点に。
会場の皆さんを交えて、笑い声も大分聞こえていました。

大切なことは、自然との共生。
生きるためにはどんなシーンでも「棍棒」が活躍するそうで、擂り粉木やドラムのスティックなども、言ってみれば棍棒だよ、と。

東さんの居住活動区域が背負っている山林は殆どが、杉檜林。人間が植林した山です。
でも手入れがなされないままになり、山に力がなくなってゆく。
そんな山に入り、手入れをし、雑木が生きられる山に戻そうと、農耕者でありながら、山に入る日々。

200年かけてこの山に益子にある山林のように広葉樹が広がるといいな、と仰っていたのが印象的でした。

「棍棒」は、杉や檜では相手より柔らかいため、力がないそうで、広葉樹のような堅木が「棍棒」には適しているそう。
言葉でこの山林の保全を、と訴えるより、雑木を植えたり探したりしながら、自分たちで「棍棒」を作る。そんなユーモアと、仲間の輪がこれから広まって、山が山として生きられたらな、と願います。

最後に、東さんがおっしゃっていた言葉。
「楽しいことや興味のあることしかしてこなかった」

楽しいことで、里山を復活させる。
苦しみよりも楽しいことを見つけながら、日々山に入っていくのは、なかなか骨が折れる作業です。
それでも、未来のために、自分が出来ることを実践する。
「棍棒が世界を救う」日も、もしかしたらそう遠くないのかもしれませんね。

余談ですが、我が家には先日、屋根裏にネズミより大きいイタチだと思われる小動物が夜中じゅう運動会を繰り広げて、我が家の飼い猫たちも部屋を走り回っていました。
お陰で私は寝不足に。
そんな話を友人にしたら「ね、やっぱり棍棒作らないと」と言われてしまいました。
うむ、二百年計画に一歩足を踏み入れました。

 

(土祭2021レポーター:松永玲美 写真:簑田理香)

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