J15 「美は生命の輝き」 白石たかし記念館

白石たかし 鏃  1994年 益子陶芸美術館所蔵

 はるか遠い古代の地球。きらきらと光り耀く鏃という道具を縄文時代の人々は作っていました。数万年もの長い年月を経た現代、その美しい道具を見つめ思いを馳せる作家がいました。
白石たかしさんは、人間の持つ生命力や、本能的な表現、大地が生みだすエネルギーを求めて幾度かの旅をしました。ヨーロッパや中近東では数々の建築物の圧倒的な表現力に目を見張り、ペルシャのガラスやエフェソスの遺跡から強い感銘を受けました。40代であった当時、旅での印象を大切に花器や食器へ、つぎつぎと表現していきます。

 50代の頃には縄文土器のダイナミックで神秘的な表現や、石を打ち欠くという単純な行為のなかに規則性と高度な技法をもつ石器の「用途が作り出す機能的な美」の意味を突き詰め、誕生したのが縄文シリーズでした。「何が作りたいのか」と、自身の感性と対象物の美しさを探求しています。
「生命を伝えて行く為に自然のものを獲る、それは自分の生命と等々の尊い生命です。美しい生命、それをいただく時の道具が美しくなるのはあたりまえのことのように創られました。」(1993年「美は生命の輝き」『高野山教報』)
 ダイナミックに大地を捉えた作品から受ける衝撃は、まるで私たち人間の存在意義を諭すかのように心に響きます。

白石たかし 勾玉 1994年 益子陶芸美術館所蔵

土祭期間中は、白石さんが実際に作陶を行った工房にて作品を展示します。彼が伝えたかった世界とは何か。ぜひ体感してください。
9月16、17、29、30日 10:00~16:00
白石たかし記念館

[写真]
撮 影:矢野津々美

                                                (ま)

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