23 彫刻「風の回廊」 橋本雅也
彫刻「風の回廊」 橋本雅也
昨年の初春、橋本さんは栃木県の山へと向かいました。
強い風が吹き抜ける切り立った丘の頂上で、一頭の鹿と出会います。
その鹿は息絶えて間もない雄の鹿でした。
静かに大地に帰りゆく鹿、そして頭上を吹き抜ける風。
山を降りた橋本さんはその風に潜む気配を捉えようと制作に向かいました。
鹿の角から精緻に削り出された彫刻作品に、その姿がうつしだされます。
■会期中は毎日オープン 11:00~17:00
■ 作家のお話と朗読会 / 朗読「殻のない種」+対談 橋本雅也×馬場浩史
9月22日 開場18:00 開演18:30~20:00 starnet zoneにて。
2009年冬。橋本さんは自身が用いている角や骨といったかつて命であった
物たちを見つめ直すという動機の元、猟師に同行し冬山へ向かいました。
身を切るような寒さの中、猟の現実を目の当たりにします。
その鹿をアトリエに持ち帰った橋本さんは、庭先の花々が咲き始める頃、
手元に残った鹿の骨を彫り始め、一頭の鹿は様々な花へと生まれ変わりました。
そして翌年、それらの作品、そして山中での記録を綴った制作手記を含めた
作品集「殻のない種」が出版されました。
イベント当日は会場に「殻のない種」からの作品が展示に加わり、朗読と合わせて
ご覧いただけます。
橋本雅也/はしもとまさや
彫刻家。岐阜県高山市生まれ。2000年インドの旅の途上で一本の流木を手にしたことがきっかけとなり制作活動を始め、以後新たな素材との出会いを求めて世界各地を旅する。帰国後、神奈川県に活動の拠点を置き、それまで収集した木や鉱物、角や動物の骨といった素材を使用し作品を制作。独自の素材との対話方法を確立する。2007年、無住の寺に生活と創作の場を移す。2011年、大阪・主水書房にて初個展「殻のない種から」を開催。狩りで得た一頭の鹿の命を昇華した花々の彫刻作品は大きな反響を呼んだ。グループ展/2009 年「Social Activism」structre gallerytr(イギリス、ロンドン)、個展/2009年「Hair Salon Bouef」 Silke & The Gallery(ベルギー、アントワープ)、2011年「殻のない種から」主水書房(日本、大阪)など。
「タイハイスイセン」2010年
素材:鹿の骨、鹿角 「殻のない種から」(主水書房)にて発表 写真/渞忠之
会場:starnet zone
建物の基本となるのは、益子町内から移築した江戸後期の民家。
古材が軸となり、新材が組み合う形になっていて、白い漆喰の壁に古材の黒い梁が
力強い存在感を出しています。
吹き抜けのホールを見上げると、天窓からは光が降り注ぎます。
写真/村田昇