七つの神社を巡る|仲田智さん(2)制作レポ|アトリエに伺いました

益子町から車で40分ほど。那珂川沿いの国道から緑に覆われた山に上がったところに、仲田さんのご自宅とアトリエがあります。里山の木々に囲まれ、隣接する人家のないこの場所は、周りに気兼ねすることなく作品作りに打ち込める環境ということで選ばれたそうです。

バナナの木と赤い扉が印象的なご自宅に隣接して、仲田さんのアトリエがあります。


△すこし南国っぽい雰囲気のご自宅


△仲田智さん

美術館などの展示で再現されたアトリエは見たことがありますが、実際に制作の現場となっている「本物」を見るのは初めて。空間に漂う匂いやあちこちにある素材たちから、ここが「生きた場所」ということが伝わってきます。


△アトリエに置かれた「画材」たち

アトリエにあるこれらの素材は、仲田さんが作品を制作される際に使う「画材」。絵具だけではなく身近なところにもある様々なものたちを使う技法のことを、現代アートの分野では「ミクストメディア」と呼びます。ミクストメディアの作品を見るときには、どんなものが使われているのか、ちょっと気になったりします。

今回、長堤・八幡神社に展示される(仲田さんによると「どこでもドア」のような)作品も、様々な素材を使って制作がすすんでいます。

アトリエに置かれた制作中の作品を見ると、確かに色々な、でもどこかで見たことがある身近なものたちが使われています。使われている物たちを紹介したい気持ちもありますが、それでは見る楽しみを減じてしまうことにもなりますので、ぐっと我慢。

一体なにでつくられているのか、実際に展示が始まってから皆さんの目で直接お確かめください。

そういえば、アトリエやご自宅の周りに色々な鉄板が置かれていましたが、実はこれらも、れっきとした「画材」なのです。

最初に見たとき、「なんでこんなに看板がたくさん置いてあるのかな…」と思って見ていたのですが、すべてこれからの作品制作のため、仲田さんが屋外でエイジング(時間が経つとともに生まれる風合い)させているものだったのです。作品制作の際に鉄板を止めるための釘もあったのにはびっくりしました。


△古い看板…ではありません


△この釘も素材の一つ

当たり前ではありますが、そうした細かいところまで意識して制作をされている仲田さん。今回の作品にもその想いがたくさん詰まっています。

でも仲田さんは、「すべての人に同じように見て感じてもらわなくてもいい」「どう見てほしいより、どう感じるかが大事だと思う」と話されます。

アート鑑賞というとどうしても斜に構えてしまいがちですが、まずは出会ったときに感じた想いが大切、ということなのでしょう。

何が使ってつくられているのか、そこにどんなこだわりがあるのか、そして作品を見たときにどんな想いが自分の中に生まれてくるのか。

長堤の八幡神社に「アラワレル」その作品との出会いが、ぐっと楽しみになった取材でした。

 

(土祭2021レポーター:鈴木利典)

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