七つの神社を巡る|KINTAさん(2)制作レポ
すこしひんやりした9月の頭、アートプログラム「七つの神社を巡る」の参加作家のひとりである、KINTAさんを訪ねた。
千と千尋の神隠しの冒頭に流れる、久石譲さんの「あの夏へ」がしっくりくるような細く青々と茂った道を進むと、急に開けた土地に出た。そこにKINTAさんの作業場はあった。
ゴミじゃなくて、僕には宝なのです。
「ここにあるもの、もう使えないって思うでしょ?」
KINTAさんは作業場をぐるっと囲むように置かれている、錆びた容器や家電、そして今回の主役である農機具を眺めながら言った。
「ぐずぐずのどうにもならないって大きさになるまで、ここにあるものは全て宝も同然。」
その言葉を聞いた時に、KINTAさんの素材に対する敬意を感じた。
素材をサポートして、素材を生かす作品作りがKINTAさんのやり方だ。
これが今回のアート「益子農機具神獣と星の精霊群」のメイン素材、引退した農機具の一部である。大地を耕し、土に触れてきた農機具の新たな一面を引き出し、神の使いである「神獣」へと昇華させる予定だ。
これまでも、引退した農機具を使用した作品をつくってきたKINTAさん。
胴体はエンジンカバー、しっぽはプラウ(土を耕す農機具)の歯の生まれ変わりであろうか、愛嬌のある犬の置物。
馬の顔のような部品からインスピレーションを得た、大きな白馬のオブジェ。頭部も胴体も脚部も、もとの形が生かされている。
神獣の完成は9月末ごろ
笠間市で活動している、吹きガラス作家の杉山洋二さんに神獣の目をつくっていただいたそう。引き込まれそうになるほど澄んだガラスに、黒い点がひとつ。
すでに、いきいきとした神獣が想像できる気がしてくるから不思議だ。
また、舞台となるのは塙地区にある「星宮(ほしのみや)神社」。
神社の名前も生かし、星空を和紙で表現する構想もあるそうだ。
樹木が生い茂る星宮(ほしのみや)神社に、一体の神獣とそれを囲む星々。どんな空間になるか、とても楽しみである。
「力強い神獣を表現したいとは思っているけど、素材がどうなっていくか、つくってみないとわからない。だから面白い。」と、KINTAさんは言う。
「地面から星空に」というテーマでつくる「益子農機具神獣と星の精霊群」。
いまから完成が待ち遠しい。
(土祭2021レポーター 金敷奈穂)