大地で遊ぶ|SIDE CORE (1)紹介コラム
10月15日からのメイン期間では、アーティストの屋外展示が始まります。
どんな考えや環境で創作活動を行い、土祭2021では
どんな世界を私たちに見せてくれるのでしょうか。
土祭2021の広報冊子『ヒジサイノート』に掲載中のアーティストへのインタビュー記事を、お一人ずつ、こちらでも順に紹介していきます。今後、住民レポーターさんたちによる制作風景のレポートの掲載も始まりますので、どうぞお楽しみにお待ちください。
左から、西広太志、高須咲恵、松下徹。SIDE CORE は、今年8月2 日から9月5日までワタリウム美術館主催の「水の波紋展 -消えゆく風景から- 新たなランドスケープ」に参加。 この写真を撮影した都心の空き地に7組のアーティストを招き「地球 神宮前 空き地」と題して新たな風景を築いた。Photo: HAMADA Shin
アートプログラム|大地で遊ぶ 益子地区 元平野スタンド
SIDE CORE 扉を一枚開けて、その先へ。
SIDE CORE(サイドコア)は、高須咲恵、松下徹、西広太志の三名からなるアーティストチームで、それぞれが作家活動を行いながら、展覧会や地方での芸術祭の企画やキュレーション、作品制作を行なっている。フィールドは東京/都市というイメージもあるが、二〇一七年の石巻市「リボーンアート・フェスティバル」への招聘以降、沖縄島北部「やんばるアートフェスティバル」や青森市の国際芸術センター青森など地方での活動も続いている。
益子では、縄文時代の遺跡や遺物が出土している丘陵地や、旧市街地などで集中的にリサーチを行い、最終的に彼らが展示会場として決めたのは、ガソリンスタンド跡地。日没後、夜の時間に鑑賞してもらう展示にするという。八月の終わり。現地の実測などのために来町した高須さんと西広さんにお話しを聞いた。まずは「なぜ、夜の展示に?」ということから。
高須*前から、夜の街を歩きながら作品を作ったり鑑賞したりする「MIDNIGHT WALK tour」を東京や地方でもやってきているし、一般的なルールの中で活動する昼間とは違った時間が夜には流れていて、そっちの方が生きやすいということもあるし・・・。それに益子だったら、例えば、夜通し薪をくべて窯を焚いている人たちの輝く時間がどこかにあって。知っている人だけがそこへ行ける、そんな閉じられた秘密の時間みたいなものに関心があるんですよ。
西広*地方に呼ばれて行くと、昼間は制作しているから夜しか探索できない。国道沿いであれば、その土地のリサイクルショップに入ってみたり、森しかなければ夜の森に入ってみたり。石巻では、半島の先端にある作品を見るために夜の森を車で行くツアーをしたり・・・。面白いものはいつも先っぽにありそうなので、とにかく行ってみる。そういう考え方で東京でも歩き倒してきた。それは地方に行っても変わらないですね。
高須*そうそう。入っていけなそうな所があっても、扉を一枚開けて行ってみるとか、見えてないけど身近にあるものを探すとか、都内でも地方でも気にしていることは同じかな。
今回の展示で開く一枚の扉は、きっと未知ノ日常への入り口になるのだろう。
「展示の後がむしろ大切で、益子の人たちの、例えば夜の使い方が変わるとか。自分たちがここに関わったことで何かが生まれて続いていけばすごいなあ、と。僕たちがやったからどうのというより、ふわっと関わったという事実だけが残っていればいい」と話す西広さんに、高須さんも頷いていた。日常を開拓していく扉を開ける鍵は、その場に立ち会う私たちに渡される。
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SIDE CORE プログラム紹介ページ
http://hijisai.jp/program/c-04/
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『ヒジサイノート 5号』より転載。
益子の未知の日常を探る巻頭記事なども掲載した土祭2021の広報冊子『ヒジサイノート』は
土祭オンラインサイトでも送料のみで購入できます。
https://hijisai.stores.jp
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取材・執筆|簑田理香(風景社)